ひつじ書房 連濁の規則性をもとめて 平野尊識著 ひつじ書房 連濁の規則性をもとめて 平野尊識著
2021年5月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第172巻

連濁の規則性をもとめて

平野尊識著

定価4800円+税 A5判上製函入り 216頁

ISBN978-4-8234-1019-2

ひつじ書房

RENDAKU: A Quest for its Regularities
Hirano Takanori


【内容】
複合語における連濁形・非連濁形の生起を規則によって説明する試みである。その前提として、右枝条件など連濁を阻止する制約を再吟味するとともに、世界の言語の複合語の構成を概観した。複合語化には前項と後項を結び付ける要素の存在が必要なこと、このような要素はかつて日本語にも存在し、それが連濁の発生へと繋がったことを指摘した。また、規則化の問題点が明らかになったことから、連濁研究の今後の方向性を示したと言える。

【目次】
まえがき

Ⅰ 複合語の構造と連濁の生起
第1章 連濁について
1. 連濁と複合語
2. 連濁の定義
3. 複合語と主要部
4. 連濁と一語性
5. 連濁を阻止する要因(非連濁規則)
5.1 前項と後項が連体助詞「の」「が」で結ばれる複合語
5.2 前項が後項の目的語となる複合語
5.3 連濁に関する説明が困難な複合語
5.4 ライマンの法則
5.5 右枝条件
6. 複合語の形成
7. ローマ字表記の方法
8. まとめ

第2章 複合語の構造と連濁
1. 連濁は複合語の構造に依存する
2. 複合語の構造
2.1 複合語のタイプ
2.2 単純複合語と複雑複合語
3. 複合語と主要部の位置
3.1 日本語:主要部後置
3.2 主要部の位置:英語とドイツ語では
3.3 「右側主要部の規則」は普遍的か
4. 右枝条件

第3章 連濁の機能と複合語の派生
1. はじめに
2. 連濁の定義
3. 連濁の機能
3.1 複合語とは
3.2 連濁する複合語と連濁しない複合語
4. 複合語の構成と形成、そして連濁の機能
5. 連濁と複合語の「透明度」
5.1 「透明度」の概念
5.2 複合語と透明度
5.3 不透明性と単純語化
6. おわりに

第4章 前項と後項を結び付ける形態素
1. 清濁は音素的区別として古代の日本語から存在していた
2. 連濁素*N:複合語を形成するための形態素
3. 連濁の起源に関して

第5章 「右枝条件」と「頭音法則」
1. はじめに
2. 右枝条件
2.1 「右枝条件」とは
2.2 「右枝条件」は何故必要なのか
3. 複合語のタイプと連濁
4. 「右側要素の連濁規則」と「左側要素の非連濁規則」
5. 並列複合語を含む複雑複合語
6. おわりに

第6章 連結辞と連濁
1. はじめに
2. 複合語の形成 
2.1 複合語の具体例と連結辞
2.2 名詞句から複合語へ
3. 日本語の複合語形成と連濁
3.1 有声阻害音の発生
3.2 連濁の発生
3.3 前日本語における複合語形成のパターン
4. おわりに

第7章 連濁する複合語と連濁しない複合語
1. はじめに
2. 連結辞と連濁素:連濁が発生したプロセス
3. 複合語形成のいくつかのパターン:再検討
3.1 連濁する複合語のパターン
3.2 連濁しない複合語のパターン
3.3 Vn+N型の複合語と連濁
3.4 まとめ
4. Vn+Nの複合語と主要部
5. 単語境界が明確な場合、連濁が起こりにくい
5.1 「焼酎」を後項に取る複合語
5.2 後項の「独立性」と連濁
5.3 「独立性」について:まとめ
6. 単語境界の認識と連濁
6.1 前項末がラ行音の複合語
6.2 音節数/モーラ数と連濁
6.3 「連体助詞が介在する複合語は連濁しない」ことについて
7. おわりに

第8章 連濁化と非連濁化
1. はじめに
2. 連濁化と類推:「…つくり」から「…づくり」へ
2.1 前項の機能と連濁:目的語か副詞的か
2.2 資料の分析
2.3 「さけつくり」か「さけづくり」か
3. 連濁化、非連濁化とその要因
3.1 連濁化、非連濁化の例
3.2 非連濁化とその要因
4. おわりに

Ⅱ 連濁・非連濁規則と連濁の規則化
第9章 連濁の規則性と起源
1. はじめに
2. 連濁の規則性
2.1 第1の規則について
2.2 第2の規則について
2.3 第3の規則について
2.4 その他の規則性
3. 連濁の起こる場合の条件と起こらない場合の条件
3.1 連濁の発生と鼻音的要素
3.2 ligateme[連濁素]の設定とその機能
3.3 タガログ語のligature[連結辞]との比較
4. おわりに

第10章 河川名と連濁
1. はじめに
2. 連濁しない河川名の5つのタイプ
3. 連濁しない河川名の音韻構造と形態論
4. おわりに

第11章 連濁・非連濁に関わる条件
1. はじめに
2. 理論的枠組み
2.1 規則化にあたって
2.2 連濁形が現れるための条件
2.3 複合語形成のためのインプットとアウトプット:構造記述と目印
2.4 「頭音法則」と前項と後項の「境目」
3. 連濁素*Nの設定:その裏付け
3.1 現代日本語からの証拠
3.2 歴史的証拠
3.3 漢語から
3.4 まとめ
4. 河川名と連濁(河川名における非連濁形:「~カワ」の例)
4.1 ラ行音と非連濁形:前項と後項の境目と連濁
5. ラ行音の後ろでは何故非連濁形が現れる(傾向にある)のか
5.1 上代日本語における「頭音法則」
5.2 ラ行音制約、濁音制約
5.3 前項・後項のモーラ数と連濁
6. 前項と後項の長さとローゼンの法則
7. おわりに

第12章 連濁と非連濁:規則化の試み
1. はじめに
2. 連濁規則
3. 連濁に関する制約
4. 派生の具体例
4.1 連濁素を含む複合語
4.2 連濁素を含まない複合語
4.3 連濁に関わる制約:補足
4.4 規則化のまとめ
4.5 規則化の問題点
5. これまでのまとめ
6. 連濁と類似の現象は?
6.1 連濁の特異性
6.2 連濁と類似の現象:カナダ北部のSlavi語(スレヴィ語)から
7. おわりに

参考文献
索引

   


【著者紹介】
平野尊識(ひらの たかのり)
福岡市生まれ。1972年九州大学大学院文学研究科言語学専攻修士課程修了(文学修士)。1980年より山口大学人文学部助教授、1994年に教授。2012年、定年により山口大学を退職。
[主な著書・論文]
「連濁の規則性と起源」『文学研究』71(九州大学文学部、1974年)、Compound nouns of the type NVn in Japanese: Their formation and relationship to subject/topic.『言語研究』121(2002年)、Tagalog grammar: A typological perspective. (Hituzi Syobo Publishing Company, 2012年)


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