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「学術書の出版の仕方」の第3回です。
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日本学術振興会申請の手順
今回は、「3 出版助成金の機能 助成金は本の値段を安くするためのものではない 」を説明する予告でしたが、順番を変更します。「4 申請手続きの説明 完全原稿 とは何か、計画調書の書き方」の内容の一部を繰り上げて、学術振興会の助成の書類 について説明します。予定目次とは若干変更していきます。全体について、8月中に 説明できることを目指したいと思っています。
日本学術振興会へ「公開促進費助成」を申請するのに必要な書類は、計画調書、見積 書、申請カード、完成原稿です。ここでは、計画調書と見積書と完全原稿についてふ れます。この3つ以外は手続きのためのものに過ぎませんので、説明は必要がないと 思われます。計画調書をテキストにしたものを付けていますので、ご覧ください。以 下のページから、昨年のファイルをご覧いただけます。 http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/03_keikaku/download.html
●計画調書
計画調書は、もっとも重要な書類です。この書類に基づいて、審査されるからです。 計画調書には、原稿の内容や刊行の意義について、記載します。調書での説明が不十 分であれば、前段階の審査を落ちてしまい、審査委員に原稿を見てもらうこともでき ません。その意味で、とても重要なものです。
●完全原稿
完全原稿は、製本してないものは表題を付け、仮製本(市販のファイルに綴じても可) で提出します。完全原稿を提出する意味は2つあります。助成金の交付が決定しても、 実際に原稿がなければ、本を作ることができません。ひいては、計上した予算を消化 できないことになります。きちんと本ができるという根拠として、実際に最後まで書 かれている原稿が必要であるということです。もう一つは、内容を見るというもの。 内容についてどの程度具体的に審査しているかについては、聞くことができないので 不明ですが、業界の中堅以上の方が見ていると言われています。(完全原稿と呼びま すが、印刷所に入れて組みはじめるまでは、本文を改良したり、直したりすることは できます。)
傾向として、学位論文で、他に発表していない、初めて発表するものは、学位論文そ のままでも、かまいませんが、いくつかの場所に発表したものをまとめて本にしよう とした場合は、きちんと書き直した方でないと通りにくいことがあるようです。すで に研究成果をあげている若手・中堅の研究者が申請する場合は、書き下ろしか、きち んとまとめ直したものである必要があります。
●調書の書き方
調書の書き方については稿を改めて、別の機会に、詳しくふれます。
●見積もり
見積もりは、複数の社に見積もりを取るようにと書いてありますが、実績があり、つ きあいのあるところに見積もりを作ってもらうのでよいと思います。
出版社とつきあいがあることが望ましいと思います。相談する出版社は、その出版社 の読者であるべきでしょう。学位論文を刊行するということは、研究者にとっては節 目です。それまでに影響を受けた研究書があり、読者であって、恩恵をこうむったと いうことがあれば、そのことを大事にしてください。1冊も読んだこともない出版社 から、本を出すということはあまり考えにくいと思います。もっとも、新しいジャン ルの研究であれば、既知の出版社は存在しないということもあるかもしれません。そ の場合であっても、つきあおうという出版社の本は1冊お買いになることをおすすめ します。その社の本の作り方がわかるからです。(あなたが、研究者であれば、自分 が自分の著書を出す版元を選ぶというような視点からも、本を手にしたり、購入した りしていくことをおすすめします。)
学術書を出している出版社は、学会に出店していることが多いですので、その店頭で ことばをかわし、名刺を交換しておくことをおすすめします。本当は、師匠にあたる 先生が、弟子を紹介するべきなのだと思いますが、なかなかそのようなことはありま せん。何かのきっかけを作って、挨拶して、自己紹介をしておくことをおすすめしま す。そうして、申請する段階になりましたら、その名刺を交換した担当者に連絡する ところからはじまります。その相手が、担当者にならなくても、糸口をつかむことが できます。
また、学術出版社の刊行しているメールマガジンは登録しましょう。その社の方針や 本を作るに当たっての気持ちが表れていますので、ポリシーがご自身にあったところ を選ぶことができます。その上で、いっしょに本を作っていくという姿勢が、著者に も出版社にも必要だと思います。学術書を刊行するということは、利益第一の姿勢だ けではできません。共感がなければ、協働することはできません。この点で、明らか に複製された手紙を、複数の出版社に送り、本を出したいがと言って、返事を待つと いうやり方はおすすめできません。インターネット上には、そのようなことを書いて いる研究者の方のページもありますが、私は賛成できません。逆に出版社のどの本を 読んでこのような理由だから、そちらの出版社で本を出したいということであれば、 そのような手紙を受け取った社は、かならず、丁寧な対応と仕事をすることでしょう。
出版社に打診する内容は、見積もりを作ってもらうということと、計画調書の案を見 てもらい、刊行の手伝いをしてくれるかと確認することです。助成金が通らなかった 場合に、どうなるかも聞きたいところですが、その点については、別の機会に申し上 げます。
打診して、了解が得られれば、計画調書を読んで、見積もりを作ってもらうことにな ります。書類を読んで、見積もりを作るのは、慣れていれば半日でできます。計画調 書の書き方については、一通りの助言をすることができますし、ご質問に対して、た いていのことは、お答えできます。
●7月の段階で、留意することは、11月の提出までに、完全原稿を書きあげることが できるスケジュールを立てるということと、見積もりを書いてもらうパートナーにな る出版社を見つけるということです。
もし、ひつじ書房での刊行を希望される場合は、この夏から秋の前半にかけてお会い する機会を作っていただけると幸いです。弊社では、簡単なプレゼンをしていただい て、申請をしていくかどうかを考えることにしています。ご遠慮なくお問い合わせく ださい。
なお、ひつじ書房では、この夏の間に、4回のメール配信を予定しております。大学 のメールサーバーが停止し、受信ができないことが予想される方は、ご連絡ください。
<計画調書のテキスト>
1 審査希望分野 1 人文科学系 2 社会科学系 3 理工系 4 生物系 2 広領域申請 3 分 類 名 (番 号) ( ) ( ) ( ) 4 申請者自宅住所 (団体の場合は団体の所在地) (生年月日:明・大・昭 年 月 日生) 5 申請者名 (団体の代表者の場合は、 団体名、代表者の職名・氏名) 印 6 所属機関・部局・職名 7 連絡・照会先 (電 話 − − ) (FAX − − ) (e-mail ) 8 刊行物の名称 9 著 者 ・著作権者 (全員で 人) 10 編 者 (全員で 人) <刊行経費等について> 11 和・欧・その他 12 判型 13 ページ数 14 発行部数 15 直接出版費(税込) 16 定価(税込) (A) 円 17 卸売価格(税込) (B) 円 18 1部当たりの原価 (A)/(C) 円 19 申請上限額 (= 直接出版費(A)-{定価(B)×0.7×0.5×(発行部数(C)×0.6)}) 20 刊行経費の補助要求額 A -{ B ×0.7×0.5×(C ×0.6)}= 円 千 円 21 出版社等への原稿組入日 (当該年度の4月1日以降) 22 発 行 予 定 年 月 日 (当該年度の2月末日まで) 23 出 版 社(発行所) 名 <翻訳については省く> <事業の目的・概要> 34 著者(編者)の主要著書・論文 (人数が多いため、枠内に書ききれない場合は、代表して何名かの著者について記 入してください。) 35 著者(編者)の研究歴 (人数が多いため、枠内に書ききれない場合は、代表して何名かの著者について記 入してください。) 36 著者・著作権者全員の氏名・所属機関・部局・職名(申請者を含む) (著者と著作権者が異なる場合は、著者と著作権者の区別をつけて記入してくだ い。) 37 編者全員の氏名・所属機関・部局・職名(申請者を含む) 38 翻訳者・校閲者について(翻訳・校閲経費の申請者のみ記入してください。) 39 刊行物の内容(概要) 40 目次(項目を列記してください。) 41 刊行の目的及び意義 42 本刊行物を当該年度(平成15年度又は平成16年度)に刊行する意義 43 本刊行物が学術の国際交流に対して果たす役割 44 補助金を必要とする理由 45 本年度における複数申請の有無(有の場合はその理由) (複数申請を行っている場合、その理由)(本メールは、出典を明示して下されば、転載は自由です。)