専門書の出版は商業的に成立しにくいと以前からよく言われている.
成立しにくいとは,成立し得ないということではないであろう.現に,ジャンルにこだわらないで,成立している出版社もある.(経済的な内情はどうであれ,出版がいのち生命と考え続けられればの話だが.)
書き手の立場からの論考,創り手の立場からの思考,それに読み手の立場からの意見や物の見方などのバランスの問題で「成立する,しない」が決まっているのかも知れないと思う.
今日,学術論文等の発表は,その発表の場の確保や情報の共有という点だけを考えれば,書き手の側のホームページで公開すればよいことなのかも知れない.
しかし,それで本当によいのであろうか.本としての形態がなくなってしまってよいのであろうか.一人の出版人として,もろ手を挙げて賛成できない一方,また,論文の出版を商業的に成立させる難しさも感じている.
電子化が進み,読書人が少なくなったと言われる現代社会の中で,ふとそのようなことを考えてしまう今日このごろである.
開拓社 山本 安彦