<言語学への興味>
大学という場所には、生まれ育った故郷を初めて離れた若者達が多く集まり、お国言葉が飛び交っています。その現代の若者がテレビやラジオによって誰もが標準語の共通の理解を持っているとはいっても、大学のような集団の場では、お互いのアクセントやイントネーションなど言葉遣いの微妙な違いに気付き途惑ったり、思いもかけない言葉の妙を味わったりします。そのような言葉のことがお昼休みや放課後の話題に上らないことはありませんし、キャンパスの中では、誰かの持ち寄った面白い言葉や風変わりなイントネーションが流行になっている場合も多くあります。キャンパスは方言のルツボであるとも言えます。そのなかで生活する若者たちの言葉についての興味や関心は、人間への興味・関心へと向かい、言葉を媒介として、若者たちは大きく成長して行きます。このような経験を多くの人がしているのではないでしょうか。以上は、学生時代の個人的な感想です。
出身の異なる人たちが出逢ったとき必ず発生する、こういうちょっとした話題は、あるいはその場限りに終わるかもしれませんが、これこそが難解とも思われる「言語学」への入口なのでしょう。そのような関心から始まり、やがて知的関心にまで高まった時、「言語学」の扉は開かれ、人間の知の宝庫である書物へと誘われることになるでしょう。その言葉や言葉遣いについての真意が解り、「ああなるほど!」とまで辿り着くためには、やはり「本」を読んで少々勉強する必要が、あるでしょう。
<出版へ>
当社は関西から当フォーラムに参加して2年目の新参者、各ブックフェアへの出品でも先輩各社の足を引っ張りご迷惑をお掛けしております。
さて、小社の出版物は広範な言語学の中でも国語学関連の専門研究書が中心となっており、主な読者も専門研究者の先生方です。内容は著者の研究成果をまとめた学術書であり、次代に残しておかねばならない人間の叡智の結晶のようなものです。このような学術専門書はどうしても高定価本になるのですが、一方、新たな学術成果の一書であって、しかも21世紀の文化の礎を築くような文化言語学のシリーズも心掛け、キャンパスの若者たちにも手の届くような価格で言語学出版の普及にも努めていきたく念じております。
書店様の棚にも並べていただき、読者の皆様に少しでも近づく努力をして参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
和泉書院 廣橋研三 徳野裕昭