2008.6.17更新

ワークショップ

社会に参加していく市民としての言語教育:

クリティカルリテラシーの視点を取り入れた実践報告(カタカナ、教科書書き換え、ポッドキャストプロジェクト)

ことばの教育を考えるとき、ことばは何のためにあるのだろうかという根本的な問いに立ち返ってみることは大切なことである。人は世界に一人で生きているのではなく様々なコミュニティーの中で生きている。そして、そのコミュニティーの中で自己実現をはかることにより、よりよいコミュニティーの構築にも関わっている。そのために、個人は日々ことばを用いて自己発信し、様々な情報や知識を批判的に解釈し、自分の成し遂げたいことと社会/コミュニティーの要請とのバランスの中でお互いにコミュニケーションをはかっている。このように考えてみると外国語教育において言語/文化に関する知識を教え、学習した知識を用いて練習することもたしかに大切なことではあるが、それだけではグローバリゼーション、情報化社会と呼ばれるような今日の多様な社会で生きていくための柔軟性・協調性を育てることはできないことがわかる。言語教育の場では、知識の習得、それを用いたシュミレーション的な練習だけでなく、学習している言語を用いて、発信する機会、批判的に知識、情報をとらえる練習、そして、問題発見解決をしながら、自己実現をはかり、よりよいコミュニティーの構築に携わる機会を提供することが大切であると言える。

本ワークショップではクリティカルリテラシーという用語をキーにその理論的な背景を簡単に振り返った後、日本語教育における3つの実践例を紹介したい。1)教科書に提示される「カタカナ=外来語」という規範について批判的に考察し、調査することで日本語の文字使いの流動性に気付くことを目的とするカタカナプロジェクト、2)日本語の教科書を批判的に読み、実際の教科書の書き直し、調査研究を行う教科書書き換えプロジェクト、3)メディアを批判的にとらえ、ポッドキャストを作成し発信するポッドキャストプロジェクトである。本ワークショップは日本語/外国語教師のみならず、異文化間コミュニケーション、多文化教育に興味のある教師、研究者も対象にしており、言語教育でふだん忘れられがちな、社会に参加していく一市民としての教育という側面に焦点を当てる。


●本ワークショップの対象とする方
日本語教師を含む外国語教師、多文化教育に関わる者

●本ワークショップの目的
1)言語教育、多文化教育に新たな見方を提供する。
2)参加者が日頃、言語教育、多文化教育者として考えている疑問、問題などをシェアしたり、解決したりする場を提供する。

●本ワークショップの前提として必要なこと
とくになし

●料金
無料(ただし、事前申込み)

●日時
7月2日(水)5時半から7時半

●場所
ひつじ書房事務所会議スペース
112-0011 東京都文京区千石2-1-2 大和ビル2F
地図は以下のURLをご覧下さい。(google mapには旧住所も掲載されていますのでご注意下さい)
ひつじ書房 茗荷谷の場所


佐藤慎司(さとうしんじ)

コロンビア大学東アジア言語文化研究学部講師
コロンビア大学ティーチャーズカレッジ博士課程修了、博士。専門は教育人類学、言語人類学、文化人類学。1996年よりアメリカでの日本語教育に携わる。ハーバード大学日本語講師、ミドルベリー大学夏学校日本語講師などを経て、2005年より現職。

主要著書

佐藤慎司・ドーア根理子編(2008年秋 出版予定)『言葉と文化の標準を問う:国語/日本語の教育と標準化の過程の分析』明石書店

Fukai, M., Nazikian, F., and Sato, S. (2008). "Bringing Sociocultural Aspects into the Assessment: Peer Learning and Portfolio Using Blog. "Japanese Language and Literature 42(2)

佐藤慎司・深井美由紀 (2008)「社会文化的アプローチ:初級日本語ポッドキャスティングプロジェクト」(共著)『外国語としての日本語教育』畑佐由紀子編 くろしお出版

佐藤慎司 (2007)「『日本人のコミュニケーションスタイル』観とその教育の再考」リテラシーズ、第4巻1号

佐藤慎司 (2004)「クリティカルペダゴジーと日本語教育」リテラシーズ、第1巻2号

熊谷由理(くまがいゆり)

スミス大学東アジア言語文学学部

マサチューセッツ大学アマースト校教育学部博士課程修了、博士。専門は、外国語教育、応用言語学、クリティカル・リテラシー。1992年よりアメリカの大学での日本語教育に携わり、マサチューセッツ大学アマースト校日本語講師、アマースト大学日本語講師を経て、2003年より現職。

主要著書

熊谷由理(2007)「日本語教室でのクリティカル・リテラシーの実践へ向けて『WEB版リテラシーズ』4(2), 1-8 .

Kumagai, Y. (2007). Tension in a Japanese language classroom: An opportunity for critical literacy? In Kubota, R., & Austin, T. (Eds.). Critical Perspectives on World Language Education in the US. Critical Inquiry in Language Studies [Special Issue], 4(2-3), 85-116.

Iwasaki, N. & Kumagai, Y. (2008) Towards critical approaches in an advanced level Japanese course: Theory and practice through reflection and dialogues. Japanese Language and Literature, 42, 123-156.

深井美由紀(ふかいみゆき)

京都アメリカ大学コンソーシアム

インディアナ大学ブルーミントン校博士課程修了、博士。専門はテクノロジーを利用した言語教育2004年7月から2008年6年までコロンビア大学日本語講師、2008年7月より京都日本研究センター(Kyoto Consortium for Japanese Studies)勤務。

主要著書

深井美由紀・佐藤慎司 社会文化的アプローチの実践: 日本語初級中級ポッドキャストプロジェクト 細川英雄(編)『魅力ある活動型日本語教育の世界』東京:凡人社(2008年9月出版予定)

佐藤慎司・深井美由紀(2008)「社会文化的アプローチ:初級日本語ポッドキャスティングプロジェクト」(共著)『外国語としての日本語教育』畑佐由紀子編 くろしお出版

Fukai, M. (2006). Standards in Internet-based newspaper project. Academic Exchange Quarterly, 10 (1)、 8-12. 2005

Omoto, Y., Fukai, M., & Schneider, K. (2005). Survey on the use of computers and the Internet in Japanese classes in the United States. Japanese Language Education Around the Globe, 15, 153-173 .

Fukai, M. (2005). Meeting the Standards for Foreign Language Learning through anInternet-Based Newspaper Project: Case Studies of Advanced-Level Japanese Learners. Journal of the National Council of Less Commonly Taught Languages, 2.






ご参加は無料ですが、事前のお申し込みが必要となります。
お申込みは、toiawase@hituzi.co.jpまでお願いします。

ポスターです。
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【ポスター(PDF)】