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11月

2018.11.20(火)

今年の漢字



毎年、公益財団法人日本漢字能力検定協会が今年の世相を表現する漢字一字を全国から募集し、12月にその結果を発表しています。
京都の清水寺で、投票数1位となった「今年の漢字」を住職が大きな筆で書く様子がニュースなどで報道されると、年末だなあと実感します。

先日たまたま機会があり、私も初めて応募しました。最近はインターネットでの応募が主流なのかと思っていたのですが、メモ用紙サイズの応募用紙に漢字一字とその理由を書いて、専用の応募箱に投函するスタイルでした。
応募は現在、インターネット、はがき、応募箱で受け付けているそうです(全国の応募箱の設置施設、書店等の一覧は日本漢字能力検定協会ホームページで見られます。https://www.kanken.or.jp/kanji2018/)。


ここで過去10年の「今年の漢字」を見てみましょう。

 2017年 北
 2016年 金
 2015年 安
 2014年 税
 2013年 輪
 2012年 金
 2011年 絆
 2010年 暑
 2009年 新
 2008年 変

「世相を表す漢字」なだけに、オリンピックの開催年は「金」が多かったり、大きな事件や社会的な変化のあった年はそれを象徴する一字が選ばれたりしているようです。

今年は12月12日(水)に発表されるそうです。
地震や台風、豪雨など災害の多かった2018年の漢字はやはり「災」でしょうか(ちなみに2004年も「災」でした)。

世相とともに、自分の一年をふりかえる漢字一字を考えてみるのもよいかもしれませんね。
年を追うごとに一年の過ぎるスピードが速まっていくように感じます。
忙しさを理由に日々を疎かにせず、立ち止まって考えたり、ふり返ったりする時間を持てたらとおもいます。





2018.11.7(水)

見切れているか



先日、原稿中に「見切れる」ということばが出てきたので、使用法が気になって調べてみました。

よく言われていることですが、「見切れる」はもともと放送業界などで、カメラに本来写り込んではいけないもの(カメラマンや舞台裏など)が入ってしまったときに、「見切れる」が使われ、それが転化して、例えば写真で写すべきものが半分切れてしまったときなどに「見切れる」と言われるようになった、と理解しています。つまり逆の意味に使われるようになったということですね。

ただ、それが本当にそうなのか、転化したというのはまことしやかな俗説ではないのか、確認したいと思いました。

それで辞書をひくわけですが、そもそも「見切れる」自体がほとんど掲載されていません。

唯一みつけた、『三省堂国語辞典』第六版(2008)では、

【見切れる】
 1〔演劇・テレビなどで〕舞台裏が見えてしまう
 2〔俗〕画面の外になり見えなくなる。

とありました。
ということで一応理解としては間違ってはいなかったとは思うのですが、〔俗〕の背景までは書かれていませんし、そもそもなぜ辞書にほとんど掲載されていないのかも気になりました。手元の辞書がすべて新しいものであるわけではないので、最新の辞書だと掲載されているものもあるのかもしれません。

と思っていたところ、ちょうど会社に新しい辞書が届きました。『現代新国語辞典 第六版』(三省堂、2019)です。こちらにも、掲載されていました。

【見切れる】
[映画・テレビで]画面からはみ出て映らない。

以上。簡潔です。『三省堂国語辞典』第六版(2008)から10年の間に、1の意味は消滅してしまったようです。見えてしまうことから、見えなくなることへ、ことばの意味が真逆になる瞬間を目撃したようで、なかなかドラマチックでした。

ここまで言い切ってしまうには、何か根拠があるのかと思い論文を探してみましたが、「見切れる」の意味変化を追った言語学の論文は見つけることができませんでした。新しい現象なのかもしれませんし、探し方が甘いのかもしれません。

もう少し、ネットで検索してみたところ、演劇・ミュージカルの情報サイト「シアターリーグ」の「舞台・演劇用語」に解説があり、やはり業界用語が転化したことが書かれていますが、そもそも「見切り」について、「「見切り」とは、舞台裏をお客様の視線から隠すために使う道具のことです。」とあったので、当初の疑問であった、「「見切れる」は元々業界用語でそれが転化したというのは俗説ではないのか」という疑問はやはり俗説ではなかったということで解消されたように思います。
「シアターリーグ」「舞台・演劇用語」
http://www.moon-light.ne.jp/termi-nology/meaning/mikireru.htm

辞書はそれぞれに個性があって、本来なら辞書ごとの性格などもきちんとおさえておかなければいけないのですが、辞書マニアになる必要はありませんが編集者は複数の辞書にあたる必要があります。微妙に電子辞書世代ではないので、一時期「ジャパネットたかた」で、「見てください。こーんなに辞書が入っているんですよ」とずらっと辞書が並べられていたのが印象的でしたが、いま仕事で使うには国語辞書だけ網羅した電子辞書が欲しいと思うのですがそういうのは無さそうです。





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