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11月

2015.11.27(金)

はじめての担当書籍、できました


わたしが編集作業に携わった初めての書籍ができあがりました。



三原健一著『日本語の活用現象』です。


『日本語の活用現象』は、生成文法の立場から日本語の文法を分析することを目的とした統語論研究の本です。

統語論研究というと、分野に明るくない人間にとってはとっつきにくい……というイメージがあるかもしれませんが、少なくとも日本語母語話者にとって、普段使っている文章がどんな仕組みで成り立っているのかは、たいへん興味を惹かれる内容だと思います。

例えば、

「よそ者は出ていけ。」

という一文は目の前の聞き手に対する命令文と考えられますが、主語である「よそ者」は三人称です。目の前の相手に対する発話であるはずの命令文に、「お前」などの二人称を使わずに三人称を用いることを、どのように考えたらよいのでしょうか。 あるいは、

「彼は来るだろうか。」

は言えるのに、

「彼は来るらしいか。」

は、どうして言えないのでしょう。
『日本語の活用現象』は上記のようなことを、生成文法、特にカートグラフィ(文の構造の地図)を用いて解明するための一冊となっています。
生成文法にまつわる用語や内容についてはそれぞれ解説が加えらえていますし、また本書の大きな特徴として、文の構造だけでなく、意味の観点からも日本語の文法を考えようと試みていることが挙げられます。統語論研究の方々にはもちろん、生成文法やカートグラフィには普段馴染みがないという方にもぜひ手に取って、読んでいただきたいと思います。

初めて担当した本ですので、正直に言えばできあがった時は「どこか間違いがないか」ということばかり心配していましたが、学会に持って行って目の前で買っていただけるところを見たり、書店さんから注文をいただいたりすると、少しずつ達成感が感じられるようになりました。

わたし自身は参加しないのですが、今週末11月28日(土)〜29日(日)に名古屋大学で開かれる言語学会にも『日本語の活用現象』を持って行き、弊社社長および社員が販売を行いますので、ぜひ、お手に取ってご覧いただきたいと思います。





2015.11.26(火)

総合目録「未発」、作成中


ひつじ書房では、年に二回、「未発ジュニア版」として、新刊近刊を掲載した目録を作成しています。元々は、年一回、総合目録「未発」を出していましたが、それでは新刊が分かりにくいし、書影も掲載して見やすいものをということで、海外の版元でよく作られていたのを参考にして、新刊近刊を中心にフルカラーで見た目にもキャッチーな「ジュニア版」を作成することになりました。

ジュニア版を出し始めてから総合目録の製作が滞ってしまっていました。私が入社した2005年頃には、ひつじ書房の刊行点数は200点を少し越える程度でしたが、その10年後の現在には3倍以上の点数となっています。そうなると、これまでの「未発」は、ひつじ書房の主なシリーズを軸にゆるやかに関連のある書籍を配置するという形で作成してきましたが、600点以上の書籍を配置するにはそれなりに構造化して配置していかないと、目録から何かを探すということが困難になります。

さらに、今後も継続して出していくことを考えると、データベースからはき出した状態で、できるだけ手を加えずに目録のレイアウトとして完成するようにしたい。

そのような目論見があり、試行錯誤しながらデータの整備をすすめていますが、時間がかかってしまい、ご不便をおかけしてしまっています。

また、今回ひつじ書房25周年記念フェアがMARUZEN&ジュンク堂書店梅田店、東京大学生協本郷書籍部で開催されるにあたり、ひつじ書房の全刊行書籍一覧を作成しましたが、その作成の途中でも目録の様々な課題が見えました。

例えば、「シリーズ 文と発話」という全3巻のシリーズがありますが、これは書誌情報上では、シリーズ名が「シリーズ 文と発話」で、書名が1巻であれば「活動としての文と発話」となっています。では索引を引く人は、「シリーズ 文と発話」で引くのか、「活動としての文と発話」で引くのか、この本について言えば、「シリーズ 文と発話 第1巻 活動としての文と発話」と索引に出ていた方が引きやすそうです。とするとデータはどうやって作っておくのが良いのか。

また、『増補 感性の変革』は、索引上「そ」の項目下か、「か」の項目下か、どちらでしょうね。こうしたことは些細なことではありますし、別に固有の問題では無くてどこの出版社も同様の問題をクリアしながらきちんと目録を刊行しているのですが、できるだけ良い目録になるように、一つずつ検討しながらすすめています。

手応えとしてはかなり良い目録になりそうだと思っていますので、いましばらくお待ち願えますと幸いです。

こちらは1994年発行の未発第一号。






2015.11.10(火)

巻末に綴じてあるあれ


本の巻末にしばしば、本文とは別紙で、折りたたまれた年表などの付録が綴じ込まれていることがあります。さて、この折り方、専門的には何というのでしょうか。

10月に刊行した新刊、『古文を楽しく読むために』(福田孝著)では、巻末に3頁分幅(両面印刷)の付録がついています。小口側を綴じ込み、巻き込む形で三つ折りになっています。
ひつじ書房ではこういった形の付録を付けることは少なく、編集中に困ったのは、デザイナーさんに体裁を伝えるときに、この折り方をなんと言えばいいのかわからなかったことです。観音開き、と言うには1頁分多いですし、片方側にしかありません。結局「片観音が〜」「巻末付録の〜」「三つ折り片観音の〜」と言ったように「とりあえずこう言えばわかるであろう名前」で呼んでいました。

途中で印刷所にきいてみたところ、営業担当の人もすぐにはわからなかったようで調べてくれました。「巻き三つ折り」と呼ぶようです。ただし、いまこのスタッフ日誌を書くために調べてみたところ、「6頁巻き折り(片観音折り)」という呼び方も発見されましたので、イッパイアッテナ状態です。ちなみにおなじ6頁巻き折りでも、蛇腹状に折ると「経本折り」とになるとか。

そんな古文以外の豆知識も与えてくれた『古文を楽しく読むために』ですが、多くの書店さんに店頭に置いていただいています。文芸の棚のほか、学習参考書の棚に置いていただいていることもあるようです。巻き三つ折りの実物が見たい方、この本でいったい何に巻き三つ折りを使ったのか気になる方はぜひ、書店を探してみてください(宣伝ですので、リンク先から目次を見ればわかるということは秘密です)。




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