こちらは半分程度の要約です。データベースから、記事が吐き出されるため、キーワードでも検索されません。せっかく書いた原稿がアーカイブ化されないことになります。そのことを避けるために、検索にかかるためのキーワード集として作っています。省いている部分がありますので、掲載紙をお読み下さい。記事のURLも頻繁に変更されてしまうためにリンクができないので日経ネット時評執筆者一覧からご覧下さい。


機会開発者としての女性起業家

 工業社会から、情報社会になると生産者・消費者ではなくて、「機会開発者」が主役になる社会になると予言したのは未来学者であった増田米二さんであった。その予言が、インターネットの普及以前に行われたということは驚くべきことだが、ニューメディアなどの「失敗」で、その意義が忘れられてしまった。

■「クリシューマー」

 「機会開発者」ということばの意味は、将来を作り出していく、主体的に時代を先取りして作り出していく人々である。消費するだけの消費者ではなく、作られたものを受け入れるのではなく、必要さえも発見し、作り出していく。プロシューマーというよりクリエイティブな側面が重要だから、クリシューマーと呼びたいところだ。

 デジタルコンテンツが、ビジネスとして離陸できない理由は、情報化が、工業社会のフレームである消費者を強化する側面と「機会開発者」たちをエンパワーマンメントする両方の側面があるから。デジタルコピーは、情報の生産を容易にし、伝達も容易にしたと同時に、情報消費をも強化している。前期情報社会のアポリア(難問)である。

■「機会開発者」たる女性起業家たち

 いっそう「機会開発者」たちの可能性と活動は大きくなっていくのであり、時代の変動は感じとれるはず。それは、Wの時代と呼ぶべきだ。家庭と仕事、公と私、おとことおんな、などなどそれぞれが別々であり、対立するとされてきた過去の枠組みを難なくこなしている「機会開発者」たち。私は、NPOやSOHOにその萌芽があると思うが、ここでは、女性起業家を取り上げる。

 たとえば、広島の女性起業家でherstoryの社長の日野佳恵子さんは、女性の視点で、お掃除服のコンセプトを変えて、今までのお掃除おばさんのようなイメージを一新した。きれいにするために、楽しく、はつらつとプロフェッショナルに働くというそれまでとはまったく違ったユニホームを提案して、作り上げた。できてみれば、当たり前のことかも知れないが、従来の既成の概念の中にいる人にとっては、わからない。

 それは、たぶん二昔前の、仕事を発注する人とその仕事を受ける人のような感覚にとらわれているからだ。仕事を出す方も、「仕事をくれてやるから汚れてやれ」という感覚ではなくなっているし、働く方も、「仕事をもらって命令されてやるのではなく、きれいにするというプロフェッショナルな感覚で気持ちよく仕事をしたい」というように変わっていることに、気が付かない。

 新しい起業家たち、特に女性起業家たちは、まさに、「機会開発者」であり、未来を開発していく人々である。そのような視点が社会の中のビオトープのように散在して、ネットワークされていくことで、前期情報社会のアポリアが乗り越えられていく。