英文学術書の販売の現状

2020年2月4日(火)

英文学術書の販売の現状

2020年最初のアップする房主の日誌になります。少し悲観的なトーンです。楽観的ではありませんが、ポジティブに打開策を考えてのことです。

ひつじ書房は、学術書を刊行しています。教科書類も刊行していますが、学術書の出版が中心の仕事です。その中でも英文の学術書を刊行しています。年始に数年の売れ行きを分析しました。今回は、英文学術書について、述べます。出版社としては、商売ですから、これらが大評判で売れていますと申しまして、勢いを付けて売っていくのが本当ですが、今回はそのようには申しません。売り上げというものは、公開されているわけではないのですし、公開する予定もありませんが、傾向を調べる方法はあります。学術書ですので、大学図書館が顧客として大きな比重になっています。その大学図書館にどのくらい入っているのかということを調べることができます。書名を入れまして、検索しますと何館の大学図書館に入っているのかを見ることができます。

CiNii Books - 大学図書館の本をさがす
https://ci.nii.ac.jp/books/

都道府県立、市町村立の公立図書館も同じように調べられるといいのですが、以下のカーリルでは地域の横断検索ができません。県ごとに調べて、全国なら、全ての県をいちいち検索していかなければならないのです。もし、公共図書館を横断的に検索する方法をご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えて下さい。

日本最大の図書館検索
カーリル
https://calil.jp

英文の学術書で検索してみて下さいますと現状が分かると思います。日本語で書かれた研究書と比べて、内容が良くないということはありませんので、その差は何なのでしょうか。研究書は、刊行時に著者に献本をお願いしています。お世話になった方であるとか、引用して下さりそうな方ですとか、そのテーマの議論に関わりのある方に送ってほしいとお願い申し上げています。その献本の数よりも、大学図書館に入っている冊数が少ないのではないでしょうか。英語の研究書は売りにくいので、多めに献本してほしいとお願いすることが多いのですが、 献本を受け取ってしまうと購入しなくてよいことになってしまい、その結果、図書館に入りにくくなってしまうのでしょうか。献本を受け取った方は、恐縮ですが、ぜひ、ご所属の大学図書館に入れて下さいますとありがたいです。著者の方は言いにくいですので、出版社から申し上げます。

重要な論文に引用されていれば、読んでみようと思って、研究室あるいは図書館に入れてもらいやすくなるのではないでしょうか。なかなか、引用されないということがあるようにも思います。研究内容に関係ないのに引用できないとおっしゃるのは、ごもっともです。関連がある場合で結構ですので、ぜひ引用、言及して下さい。

そもそもの前提として、日本国内で刊行された英文学術書をあまりお買い求めいただいていないということがあると思います。発行部数は、日本語で書かれた研究書の部数的には半分くらいで、今までの経験から絞っているのですが、それでもなかなか売りにくいです。高額とおっしゃるかもしれませんが、John Benjaminsなどとも比べまして、高額ともいえないでしょう。もっと一般的な書籍と比べましたら、高額かも知れないですけれども。どうか、日本語の研究書よりさらに、お求めいただけますとありがたいです。

売れます数が少なければ、刊行を続けて行くことは困難になります。刊行を続けて行きたいです。ぜひ、ご購入下さいまして、さらには引用してくださいますとありがたいです。今回は、お願いのようになってしまいました。申し訳ありませんが、英文学術書が、きちんと売れることで、アカデミックな議論が活発になり、学問が活性化するということにつながると思います。日本では英文学術書についてアカデミックな市場が成立していないと思われます。出版社は、商売になることをすればよいので、市場が成立していないと文句をいうくらいなら出版しなければいいというご意見もあるかもしれません。商業出版であれば、そのとおりかもしれないですが、私は、学術書というものは、十分なマーケットがあるわけではなく、作って、売っていかなければならないものであると申し上げたいと思います。学術出版の基盤はかなり脆弱なものです。ご支援がなければ、なりたちません。英文学術出版が活性化することは、若手の研究者への支援にもなると考えます。どうぞよろしくお願いします。

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執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。



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