新人の「アシスタント」という肩書き

2012年4月6日(金)

新人の「アシスタント」という肩書き

これは、ひつじメール通信で配信したものと同文です。

4月から、渡邉が、新入社員として働いています。今回の文章は、渡邉の紹介ではなくて、渡邉の肩書きについて書くことにします。ひつじ書房では新人に対して、「アシスタント」という肩書きをつけています。だいたい3年いっぱいまではアシスタントという肩書きにしています。

このアシスタントといういい方は、分かりにくいようです。アルバイトなんですね、といわれることがあります。アルバイトを連想することばなのでしょうか。

アシスタントといういい方をしている背景について説明します。出版人として一人前となるためには、自分で企画を立てて、企画の依頼をして、作って、売ることができることが大事です。零細出版社の編集者は、マーケッターであり、実際に本をお客さんに本を売る売り子でもあり、赤字を見つける校正者でもあり、用紙屋さんに紙を発注する製作担当でもあり、書店からの注文に対応することもあり、電話クレーム処理係でもあり、何でもできる必要があります。そうではなければ、本を売れないし、作ることができないと思っています。人数の少ない組織なので何でも屋さんで、ひととおりできる必要があるということです。

編集という仕事をしているという場合に、企画を立てることができてはじめて、一人前です。書籍の内容についてのアイディアに加えて、売上げの予想と製作原価の計算ができないといけないということになります。それらができて、一人前です。そのために、入社してから、いろいろなことを経験していきます。大きな会社なら、分業しているので、編集者自身が紙の発注をしたりはしないでしょう。刊行物は最初から700円で12000部のように決まっているのであれば、ひょっとしたら、原価計算も重要ではないかもしれません。しかし、まあ、研究書というなかなか売れない書籍を作っていると採算に厳しい仕事の仕方をしないと経営が持続できません。細かい実務が分かっていることが必要です。

そういうことが、できて編集者として一人前だとすると、入社したばかりのものが、私は編集者ですといえるのかというと私は、いえないと思うのです。一人前ではない段階をどう呼ぶかということが課題です。営業部、編集部というのがあるのなら、編集部のアシスタントです、といえるのですが、ひつじ書房は小さい企業なので、部局はありません。出荷も品出しも見習っているということからすると編集アシスタントですというより、単純に「アシスタント」といういい方の方が実際に即しているのではないかと思うわけです。

よくアルバイトなんですねという方がいらっしゃると申しましたが、アルバイトではありません。社員です。ただ、まだ、一人前とはいえない段階ではあるのです。単純に「社員見習」あるいは「見習社員」といえばいいのでしょうか。ちょっと昔風のいい方ですね。英語でいうと、assistant editorというのが、見習い、editorの手伝いをしているスタッフです。次にeditor、あるいはaquisition editor。つまり原稿獲得の仕事をする編集者ですね。次にcomission editorと呼ぶ、企画を立てて、契約をするような編集者と段階があるようです。アシスタントということばには、assistant editorの意味も含めているのです。

自分が企画を立てて、この研究者の本を出したいと言って、その企画を通せるようになれば、アシスタントから卒業ということになります。一応、3年間を目処としています。アシスタントはアルバイトではなくて、一人前になる過程への中途の社員なのです。あくまで、身分は社員ということです。

一人前になることを祈っています。どうぞ応援をお願いします。また、アシスタントのものが担当になった場合も、私や森脇が後ろに控えていますので、未熟なものに任せたということではありませんので、ご理解いただけましたら、幸いです。


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