再販制度は取引コストの極小化のための手段

2008年7月10日(木)

再販制度は取引コストの極小化のための手段

再販制度については、批判的であったが、最近は少し考えが変わってきた。再販制は、書店を経由しての原則であり、出版社が直接読者に届けるという場合には原則として機能しない。という前提で、書店流通でなぜ、再販制が重要かというと、これは商取引(商法)の問題と言うよりも、「文化的」「複製物」を市場に出すための、調整機能の問題であると考えるようになった。

変動しないことによって、取次・書店は

 A  時間的な価格変動を解消する
  時間的に価値が低下したり、高騰することはないという前提
     いつでも返品できる

 B  価値的な判断をしなくてよい
  値段の点で価値判断のプロセスなしに流通することができる
  目利きにならなくてもよい(育てなくてもよい)
→流通・販売時の取引コスト(査定コスト)の極小化
→出版社リスクの最大化
→流通・販売セクターの透明化(利幅が少ない)

現時点での取次を経由する流通は大手出版社の規模による流通コストの負担によってなりたっている。もし、小さな出版社がそのコストを応分に負担するとしたら、その分を価格に反映する必要があるだろう。そういう点では、「差別的」待遇ということを正論としては言いたくない。しかし、もっと負担するためには、価格を上げないとならないが、しかしながら、相場決定権を大手出版社が持っていて価格に転嫁できないのが現状である。200ページなら1600円とか大出版社でも書籍で利益をだすのは難しいのに、安価に抑えた価格で、多くの読者は相場観をお持ちになっている。そんな中で200ページ3200円であるとか、そういう値段を付けにくい。ひつじ書房は学術書であるということで、そのようなことをきちんと筋をもって行うが、それでもくろしお出版の方が安いのにと言われることがある。学術書主体とそれがメインではないところでは、部数が違うのに理解してもらえないで、ひつじ書房はケンブリッジ大学出版を目指していますのでと洋書の学術書の値段を思い出してもらうことでしか、納得してもらえない。学術書でもそうなのだから、それ以外のジャンルの書籍であれば、そのコストを転嫁できない。

つまり、書籍の生き残る道は、1)値段を現在の200パーセントにする。2)そのためには値頃感を変革する必要がある。であるが、問題は それは可能か?ということである。

ひつじ書房は学術書については、学術書の値段は一般書とは違うのですということを常に申し上げているわけである。しかし、正確に言うと学術書だからではなくて、売れる部数が少ないので経営を成り立たせるためには必要なのです、ともっと正直に言うべきかもしれない。ただ、高い値段で出して(良心的ではない)と強い口調で言われることがあると反論したくなってしまう。

大学授業での販売についてのスライド


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