あけましておめでとうございます。 2006年1月3日(火)
2006年1月3日(火)

あけましておめでとうございます。

ひつじ書房の松本功です。

2005年は、大躍進の年でした。

3年連続、新村出賞の受賞

出版社にとって、刊行した本が受賞することはとてもうれしいことです。ひつじ書房は、11月に大阪大学の由本陽子先生の著書(『複合動詞・派生動詞の意味と統語』)が新村出賞を受賞しました。結果として、3年連続の受賞となりましたので、受賞にはとてもとても驚きました。受賞は、著者の実力ですが、ひつじにとってはそのような本を出すことが出来たことが栄誉です。言語学でもっとも優れている出版社といってもいいすぎではないだろうと思います。

朝日新聞の「ひと」の欄に

12月24日に、朝日新聞の「ひと」の欄に、このことで私が載りました。これはすばらしいクリスマスプレゼントでした。とてもありがたいことです。

(http://www.hituzi.co.jp/isao/press_hituzi20051225.pdf)

私は、ひつじ書房の広告塔ですので、この栄誉を大いに宣伝させていただこうと思っています。この秋に、ちょっと奮発してスーツを新調したかいがあったというものです。私は、来年の2月に45歳になりますが、次の段階に上る時期だと思っています。

社員も3名から5名に

社員も3名から5名に増えました。今まで、数年間、本を作ってきてくれたスタッフ2名が辞めて、新しいスタッフが1月から秋までに4名入りました。

人手が増えたので春から、社員が研究室訪問を行うことができるようになりました。研究室訪問はとても、学術書の出版社にとってとても重要なことなのです。研究室訪問は、営業と実は企画開発をかねています。本を売りながら、これからの出版のタネを探します。タネをもらったり、タネを育てたりすることにつながる重要な仕事なのです。訪問先の雑談から、企画が生まれることがあります。必要なのにこういうものがないとか、こういう授業をしているであるとか、実際のニーズにふれさせていただくとても重要なチャンスです。加えて、タネをもらうことでスタッフも育っていくものです。編集という仕事は、この人の本を出したい、出すことに協力したいという気持ちが、重要なのですが、携わるというプロセスが編集者を作ります。

15周年を記念して研究書出版支援事業

この夏には、15周年を記念して研究書出版支援事業を行いました。ひつじ書房にとっては、もっとも大事なお客さんである研究者の方への日ごろの感謝をこめた事業であるとともに、これから書いていただく方と出会いたいという気持ちで催しました。ビジネスのマーケティングの考えでは「お客さんとの関係の構築」ということが重要とされています。通じるところがあると思います。また、ひつじ書房のミッションは、単に「本を出すこと」ではなく、「本を出すことによって、言語研究と言語研究者に貢献すること」であるということです。

とはいえ、発端はこうです。「研究書を出したいのだけれど、いくら出せばいいのか」という電話が何度かかってくることがありました。そのたびに、出版は印刷所ではないので、内容がわからなければ、検討できないとお伝えしてきました。ということは、大学の研究者の方も、本を出すということについてあまりご存じない方が多いということです。このことに数年前に気が付き、さて、どうしたらよいだろうと考え込んでいました。知られていないのであれば、こちらから説明しようということを思い立ったというのがはじめです。

この7月と8月には、どなたでも、ひつじ書房の事務所に来て、研究書を出すことについて質問したり、聞いたりできる「オープンオフィス」を開催しました。ひつじ書房の方で、お知りになりたいことについていろいろな説明をしました。9月には、研究書出版支援講座と銘打ちまして研究書を出すと言うことについての講演会を行いました。ひつじ書房が、たいへんお世話になっている仁田義雄先生(大阪外国語大学教授)と家入葉子先生(京都大学助教授)に話しをしていただきました。仁田先生は、ひつじの創業の前から、ご支援下さっている先生で、日本語文法研究の第一人者の方です。おかげさまで盛況で多くの方々にお越しいただきました。

(出版業界紙「新文化」にのった記事。http://www.hituzi.co.jp/hituzi-ml/sien_kouza_houkoku.html)

日本語教育の出版へ本腰

文化庁の所轄している組織で、国際交流基金という組織があることはご存じの方が多いと思いますが、国際交流基金は日本文化を海外に紹介するという文化事業的なことだけではなく、日本語教育についても事業を行っています。埼玉県のさいたま市に国際交流基金日本語国際センターがあります。ここには毎年世界各地から、日本語を教えている先生方が研修に訪れます。その研修での成果をもとに日本語国際センターの先生方の執筆で国際交流基金の日本語教授法シリーズを刊行することになりました。外国で日本語を教えている先生方にとって読みやすく、わかりやすいものということで、B5サイズで60ページくらいのものです。全部で13巻の予定になっています。最初の巻は『読むことの教え方』で、4月の刊行(予定)になります。日本語教育の世界で、ひつじの位置が、重要な位置をしめつつあるということのあかしだと思います。来年から再来年にかけて13冊を刊行してまいります。

この本をひっさげて、ことしは書店さんに営業を行います。比較的大きめの書店の棚にも、順次お願いして入れていきますので、ひつじの本で日本語教育の場所がうまっていくようにしたいと考えています。このシリーズをきっかけにいっそう日本語教育に関するよい本を作っていきたいと考えています。日本語・日本語教育のジャンルでベテランの青山美佳さんに、10月から来ていただいたのはそのためです。

株式会社化と増資

9月に株式会社化し、10月と12月に増資を行いました。著者の先生方や読者の方々にも増資を受けていただき、資本金は2195万円となりました。増資に応じて下さった方々に深く御礼申し上げます。あまりにも脆弱であった経営の基盤も少しはしっかりとしてきたと思います。

ひつじ書房からの増資のお願いに多くの方々が快く応じて下さったのもとてもありがたいことです。何人かの方には次回に回って頂くようにお願いしたくらいです。株主になって下さった方々、応じて下さろうと思って下さった方々、まことにありがとうございます。

2010年への目標

ここで、ひつじの5年後の目標を発表します。2010年には、英語での研究書を、きちんと企画して、丁寧に編集した上で、海外にまでスムーズに販売できるようにします。学術出版社として生きていくと決めた以上、それが重要なステップです。いわば、大リーグに行くぞと決めた野球選手のようなものです。そのための計画を立てるところからはじめることにします。2006年は、まず、私が、英語の研究書を1月に1冊は読むことにし、アカデミックライティングの講座を受講し、フランクフルトのブックフェアに行きます。海外の取次店を探すことをはじめます。もしかしたら、どこかと提携することもありますので、提携する出版社がありえるのかを検討しはじめます。

英語の研究書ばかりではありません。日本語学の中で日本語史・現代語以外の研究、日本文学研究と日本語学の接点、ことばに関わる関連書領域の研究(心理学、情報処理、教育学)等の分野も視野に入れた出版を模索していきたいと思います。

2010年にはひつじ書房は出版業界の中で売り上げで、上位1500位以内に入りたいと思います。具体的に言うと売り上げとして現在の倍、2億円を目指したいと思います。

規模を大きくすること、組織としてしっかりすること。このことは、大事なことでしょうか。優れた研究書を出すということが一番大事なことですが、もし、そのことが全てであるのなら、現在の人数を越えないように維持していくことが正解であろうと思います。

ただ、現状でやろうと思っていることについては不完全であると思っています。さまざまな販売計画や企画計画、財務計画を立てて運営していこうと思うとまだまだできていないことがたくさんあります。これをきちんとするためには、もう少し規模が大きい必要があると思います。可能な範囲でやれることをやるというやり方もあると思います。そうであれば、現状で維持するのがよいといえます。

ただ、今の時代、歩みをとめて、出版事業が成り立つでしょうか。現時点では、科研費の出版助成金に頼っている状態ですが、出版助成金が現時点のままで維持されるか、なくなってしまうかわかりません。万が一、状況が変わってもやっていけるように体制をかえておくためには、組織をもう少し大きくして、経済的な力をつけることと「公開促進」の意味を考えると英文の研究書の刊行に取り組む必要があると思います。日本国内だけではなく、世界的に公開できることが、公開促進の趣旨として重要だと思います。そうであるなら、英文の出版ができる体制を作る必要があるのではないかと思うからです。そのための準備をする必要があり、それに私がコミットするとすれば、人手は足りません。

さらに、言語は、人間の活動にとっての重要なものであるわけですから、もっともっと日常生活に関わる重要な部分を担うようになるのではないでしょうか。現在の日本語ブームのように、単なる興味本位や対処療法的なあり方ではなく、(それはそれで時代の潮流として意味のあることですが)もっと根本的で重要なことに関わるようになるのであれば、それに出版社として関わりたいと思います。裁判員制度が変わることや、われわれ自身の議論の方法事態が変わるのであれば、そこに出版と編集はかならず必要になると信じています。そのために力を蓄えることは、意味のあることだと思います。ひつじ書房のミッションは「本を出すことによって、言語研究と言語研究者に貢献し、そのことによって社会に貢献すること」です。

2005年は、山あり谷ありで、いろいろなことがありました。なかなか、ゆっくりとお話ししたりすることができなかったと思いますし、十分な対応ができていないところがあると思います。2006年は、もう少しスムーズにできればと思います。

みなさまにとって、2006年がよい年でありますように。

 

 

 

執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。



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