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2023.12.22更新

第54回メディアとことば研究会



日時:2021年3月21日(日)15:00–18:00
場所:オンライン開催(Zoom使用)


内容
発表1:劉翔氏(大阪大学)・金水敏氏(大阪大学)
題目:「中国・抗日作品のメディアミックスと日本人表象—『鶏毛信』のさらなる発展もふまえて—」

要旨:
中国では、1940年代以降、共産党政府主導で日本の侵略戦争に抗する人民の奮闘を描いた「抗日」作品と言うべき作品群が数多く作られた。その中でも『鶏毛信』は小説、連環画、映画などとメディアミックスが展開され、多くの中国人に記憶される作品となった。またこの作品は、日本鬼子の造形の点でもその後の作品に強い影響を与えている。本発表では、この『鶏毛信』を例にとって、具体的なメディアミックスの状況を跡づけるとともに、そこに描かれた日本人将校の人物造形をテキスト、イメージの両面から考察する。さらに、近年製作・放送された抗日戦争に勝利して70周年になる記念作品であるアニメ版(2015年)も取り上げ、メディアの進化という視点から人物像及び言語の変化の有無を検討する。

発表2:片岡邦好氏(愛知大学)
題目:「アメリカ大統領選の多層的マルチモーダル分析:トランプ候補の演説集会を題材にして」

要旨:
本発表では、第45代アメリカ大統領選に向けて、共和党の指名を勝ち取ったドナルド・トランプ氏の支援者集会に焦点を当て、片岡(2017)においてオバマ上院議員(2008年当時)の演説分析に用いた手法を援用し、両者の演説技法の特徴を比較検討することを主眼とする。それを通じて、表層的な相違点の根底に、演説というレジスターに通底する詩的原理のみならず、メディア的共謀による独自の実践作法が存在することを確認する。従来、原稿を準備せずに即興で演説を行ったトランプ氏だが、プロンプターの導入が氏の演説に多様性と規則性をもたらしたことを、マルチモーダル分析により明らかにする。