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2006.10.31更新

第15回メディアとことば研究会
場所: 北星学園大学
日時: 2006年8月25日(金)15時〜18時

発表者:
籏野智紀(慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程)
松本功(ひつじ書房代表取締役社長・編集長)



発表者: 籏野智紀(慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程)
タイトル:
日本語の談話接続表現の位相差
―若者のWeb日記から年配者の会議まで―

キーワード:
接続表現、談話標識、文の連鎖、談話分析、Web日記、文体論

概要:
概要: 本発表の目的は、私たちが日常的に使用している接続詞や副詞に代表される接続表現は、しばしば場面や個人の癖などを反映した位相差をもって談話に挿入される、という仮説のもと、実際の談話分析を通してそれを検証していくことである。
 いわゆる談話標識に関する研究は、意味・機能の分類やその歴史的変遷を追ったものから、実際に文脈の展開への貢献を考察したものまで、これまで数多くなされてきたが、談話接続表現をコミュニケーションにおける方略として論じたものは少ない。そこで本発表では、年齢、文体、専門性などの差により、8種類の位相における接続表現の使用例を観察し、実際の諸メディアにおけるその使用の傾向を探る。
 それを通じ、接続表現は、個人により使用の偏りがかなり見られる側面と、文脈や場面に応じて共通に好まれる使用の側面とを、併せ持っている表現だということを述べる。日本語という言語の特徴から社会心理学的要因までをも踏まえ、包括的に接続表現を扱うことを目標とする。




発表者: 松本功(ひつじ書房代表取締役社長・編集長)
タイトル:
電子メディア時代における紙の出版の意義について
―知性のマネジメントという視点から―
キーワード:
 電子メディア、紙の出版、知性のマネジメント、学術書出版

概要:
電子メディアがメディアとして大きな比重をしめるようになりつつある時代において、紙への印刷を主にする出版というものの意味が変容していることは疑いようのないことである。しかし、その変容の結果、紙の出版は不要なモノになるのだろうか、あるいは出版は電子出版となるのだろうか、あるいは出版という機能自体が喪失されるのだろうか。出版が、知的な営みに対して果たしてきた役割が、電子メディア時代において、紙という制限を超えて広がるのか、それとも紙とともに失われていくのか。これは、単に紙かネットかというメディア(手段)の問題を超えて、知識を社会的にどう持続していくかというメディア(媒介)の問題として問題提起したい。
 研究者、大学、図書館などとともに出版という社会的セクターの意味を知性のマネジメントという視点で捉えたい。出版の中には、知性への働きかけである編集という機能と成果物を流通し蓄積して、他地域・次世代へとつなぎ、受け継ぐ、物質的いとなみ、これらを経済的にできるだけ独立して持続する経営の3つの側面があることを指摘したい。
 基本的に日常的に学術書の出版に関わる立場から、この問題を取り上げることにしたい。