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2005.11.28更新

第12回メディアとことば研究会
場所:〈東京会場〉東洋大学・〈関西会場〉武庫川女子大学
日時: 2005年12月3日(土)

発表者:
永山友子(神奈川大学外国語学部非常勤講師)
佐竹久仁子(大阪大学大学院博士後期課程) 


発表者: 永山友子(神奈川大学外国語学部非常勤講師)
タイトル:
英語アニメーション映画に日本語サブタイトルを付ける
―環境を活かすテキスト産出という視点から―
キーワード:
行為としてのサブタイトル、英語アニメーション映画、日本語サブタイトル、映画のスクリーン、サブタイトルの可能性

概要:
日本で英語映画が公開されるとき、大抵の場合日本語サブタイトルが付けられる。その際に表現の場となるのは、物理的にも時間的にも制約を受けるスクリーンである。本研究は、英語アニメーション映画のオリジナル英語版と日本語サブタイトル版を比較しながら、サブタイトルを付けるという行為(subtitling)について考察する。日本語サブタイトルが表現しきれない英語の表現は、少なからず見受けられた。英語のセリフが放っているジョークや、登場するキャラクターが話す英語の訛りの醸し出す効果が、日本語サブタイトルに反映されていない例も多かった。一方で、英語の表現を受け止めるために、日本語独自の表現可能性が発揮されている場合も少なくなかった。サブタイトルを付けるという行為は、スクリーンに配置され、スピーカーから流される情報を環境として、テキスト(=サブタイトル)を産み出す行為である。本研究は、特に分かり易さが求められるアニメーション映画を取り上げて、環境記号論(geosemiotics, Scollon and Scollon, 2003)という視点から、日本語サブタイトルのあり方について再考する。




発表者: 佐竹久仁子(大阪大学大学院博士後期課程)
タイトル:
〈女ことば/男ことば〉規範の形成をめぐって
―明治期若年者向け雑誌から―
キーワード:
ジェンダー規範、標準語、山の手ことば、口語体、会話文

概要:
 日本語社会において特徴的なのは、ことばのジェンダー規範に「女ことば/男ことば」という非対称的に性別化された具体的な言語形式についての規範が存在することである。この規範は明治維新以後の近代化の過程で「標準語」の普及とともに形成されていったと考えられる。「標準語」の基盤とされたのは東京の中流階級のことば(具体的には「山の手ことば」)であるが、その特徴のひとつは性別化された形式の多さにある。「山の手ことば」の性別化された諸形式は、小説や雑誌、教科書などの書きことばメディアの会話文や、のちにはラジオなどの音声メディアをとおして、インフォーマルな話しことばの標準モデルとして流布されることで、「女ことば/男ことば」として規範化されていった。本発表では、「標準語」の成立期とされる1900年前後の若年者向け雑誌を資料に、当時の雑誌の言説が性別化されたことばづかいをどう価値づけてこどもたちに提示していったかを考察する。