日本の外国語教育政策史 江利川春雄著 日本の外国語教育政策史 江利川春雄著
2018年8月刊行

日本の外国語教育政策史

江利川春雄著

A5判上製カバー装 496頁 定価8,200円+税

装丁 大熊肇

ISBN 978-4-89476-933-5

ひつじ書房

A Historical Study of Foreign Language Education Policy in Japan
ERIKAWA Haruo


【内容】
古代から現在までの日本の外国語教育政策を、実践と関連づけながら通史的に考察し、今日的な示唆を抽出した。例えば小学校英語もコミュニケーション重視も、明治期から試行錯誤を重ね、貴重な知見と教訓を残している。歴史から学ぶことで、同じ誤りを繰り返すことなく、より的確な政策決定と実践を行うことができる。政策の策定過程と結果を検証し、改善すべき問題点を提言する。外国語教育政策史年表、主要な政策文書も収録。

■書評が掲載されました。
『英語教育』2018年11月号(Vol.67 No.9)New Books & DVDs掲載
評者:白倉美里

■日本英語教育史学会著作賞 受賞
江利川春雄先生が本書『日本の外国語教育政策史』で日本英語教育史学会著作賞を受賞されました(2019年5月)




【目次】
はしがき

序章 外国語教育政策の主体と課程
1. 教育政策の主体と教育法令
 戦前の教育法令
 戦後の教育法令と学習指導要領
2. 戦後における教育政策の策定主体
 審議会
 私的諮問機関
 官邸主導と政策会議
 パブリック・コメント
 財界団体からの教育要求
3. 学習指導要領の変遷
 学習指導要領と教材の変遷の概要
 高校外国語の科目名と単位数の変遷
 学習指導要領外国語(英語)科における目標の変遷
 語彙・文法・文型の変遷

第1章 古代から近世まで
1. 古代の漢学政策
 漢字の伝来
 古代の漢学教育機関
 通訳
2. キリスト教と西洋語の伝来
 西洋文化との接触
 キリシタン語学
3. 江戸時代の外国語政策
 「鎖国」体制と対外交易
 蘭学政策
 中国語
 朝鮮語
 ロシア語
 フランス語など
 英学の始まり
 開国と外国語教育機関
 英学勃興の社会経済的背景

第2章 文明開化と英学本位制の確立期(1868〜1885)
1. 明治初期の高等教育機関
 西洋式教育への転換
 開成学校
 大学南校
 大学東校
2. 学制による近代教育制度の発足
 「学制」公布(1872)
 小学校
 中学
 女子教育
 師範学校
3. 英学本位制の確立
 英学本位制
 官立外国語学校から英語学校へ
 東京大学予備門
4. 教育令と教則大綱
 教育令(1879)
 教則大綱(1881)
 高等教育の日本語化とドイツ学奨励
 中等教員免許制度
 欧化政策と小学校英語教育
 実業学校の外国語教育政策

第3章 近代学校制度の整備期(1886〜1916)
1. 学校令の公布
 学校令(1886)の歴史的意義
 帝国大学
 師範学校
 高等小学校と英語教育の本格化
 小学校外国語(英語)加設率の推移
 尋常中学校
 尋常中学校の第二外国語の廃止と実科規程(1894)
 改正中学校令(1899)
 高等女学校
 高等中学校
 高等学校令(1894)
 実業学校令(1899)
2. 英語教授法研究と教授要目制定
 中学校英語教育の内容的統一と教授法研究
 中学校教授要目(1902)
 中等学校に於ける英語教授法調査委員報告(1908)
 東京高等師範学校附属中学校教授細目(1910)
 師範学校教授要目(1910)
 中学校令施行規則の改正(1911)
 英語各分科の変遷

第4章 学校制度の拡充期(1917〜1930)
1. 教育界からの英語教育改革提案
 英語教員大会
 高等女学校の英語教育改善
 エスペラント語教授に関する建議
2. 学校令改正と学校制度の拡充
 高等小学校での外国語復活
 中学校での英語時数の削減
 実業学校の整備
 師範学校の充実
 第二次高等学校令と高等教育機関の拡充
 パーマーの招聘と英語教授研究所の設立

第5章 アジア・太平洋戦争期(1931〜1945)
1. 軍国主義と教育統制の強化
 戦時体制への移行と学校教育の再編
 外国語時間数の削減(1931)
 支那語教育の振興
 師範学校での英語必修化(1931)
 高等学校にも教授要目(1931)
 教育と教科書への統制強化
 英語教授研究所から語学教育研究所へ(1941)
 国民学校への移行と外国語教育
 『文部省小学新英語読本』
2. 太平洋戦争期の外国語教育政策
 女子の外国語縮廃
 中等学校令(1943)
 中学校教科教授及修練指導要目(1943)
 実業学校教科教授及修練指導要目(案)(1943)
 師範学校の高等教育機関化(1943)
 高等学校の教授要綱
 太平洋戦争期の英語教科書
 帝国議会での英語教科書追及(1944)
 太平洋戦争期の英語廃止論

第6章 戦後民主主義期(1945〜1951)
1. 軍国主義の払拭と民主主義教育
 墨ぬり教科書と暫定教科書
 敗戦直後の米会話ブーム
 軍国主義の払拭から民主主義教育へ
 教育刷新委員会の外国語教育政策論議(1948〜1949)
 小学校の外国語をめぐって
 中学校の外国語をめぐって
 外国語教育の振興について
2. 新制発足と学習指導要領試案の誕生
 最初の学習指導要領試案(1947)
 新制中学・高校用の国定教科書
 英語教員の自主研修と文部省講習会
 1951年版学習指導要領試案
 米軍統治下の沖縄における英語教育政策

第7章 冷戦下の英語教育振興期(1952〜1960年代)
1. アメリカの文化戦略としての英語教育振興策
 ソフト・パワー戦略としての英語教育振興策
 国際文化会館の創設
 アメリカ研究の奨励
 日本英語教育研究委員会(ELEC)創設(1956)
2. 文部行政の転換と学習指導要領の国家基準化
 日本の独立と文部行政の変化
 英語教育に対する産業界の希望(1955)
 「試案」が消えた高校学習指導要領(1955)
 法的拘束力を持つ学習指導要領(1958)
 外国語を必修化した高校学習指導要領(1960)
 検定教科書の「国定化」
 英語教育改善協議会の活動(1960)
3. 教員による教育課程の自主編成と目的論の発展
 第1次「外国語教育の四目的」(1962)
 第2次「外国語教育の四目的」(1970)
 第3次「外国語教育の四目的」(2001)


第8章 国際化時代(1970〜1980年代)
1. 言語活動重視の学習指導要領
 国際化時代の到来
 教育課程の検討過程
 言語活動を強調した中学校学習指導要領(1969)
 高校学習指導要領(1970)
2. 使える英語への模索
 使える英語を求めた中教審「四六答申」(1971)
 「新しい産業社会における人間形成」(1972)
 日本英語教育改善懇談会(1972)
 1970 年代の小学校英語教育提言
 平泉プラン(1974)と英語教育大論争
3. 国際化と「ゆとり」を目指した学習指導要領
 国際交流についての中教審答申(1974)
 「ゆとり教育」を目指した教育課程審議会答申(1976)
 英語を週3 にした中学校学習指導要領(1977)
 「英語週3」反対運動
 多様化・弾力化を打ち出した高校学習指導要領(1978)
 英文法教科書の検定廃止
4. 臨教審とコミュニケーション重視策
 臨時教育審議会の英語教育政策(1986〜1987)
 官邸主導でコミュニケーション重視に転換
 コミュニケーション重視の学習指導要領(1989)
 外国青年招致事業(JET プログラム)
 JET 以前の外国人指導助手制度
 JET プログラムの問題点
 コミュニカティブな授業の模索

第9章 グローバル化時代(1990年代以降)
1. 国際化からグローバル化へ
 ソビエト崩壊と経済グローバル化
 国際化とグローバル化の概念
 新自由主義とコミュニケーション重視
2. 財界の教育要求
 1990 年代以降の教育要求
 政治献金による政策買収
 外国資本比率が高まる日本の大企業
3. 実践的コミュニケーション能力の育成
 1990 年代の小学校英語教育政策
 ゆとり教育を求めた中教審答申(1996)
 教育課程審答申(1998)
 中学校学習指導要領の告示(1998)
 高校学習指導要領の告示(1999)
 大学英語教育の改善策(1997)
 教員免許法の改正(1998)
 生徒指導要録の改訂(2001)
 小学校「外国語会話等」の実施へ
「英語が使える日本人」の育成のための戦略構想(2002)
 教科書の内容削減と学力低下
4. グローバル人材の育成策
 グローバル化と新自由主義
 教育再生会議の英語教育改革案(2006)
 学習指導要領と教育再生懇談会報告(2008)
 小学校外国語活動の推進策
 英語教育改革総合プラン(2009)
 「5 つの提言と具体的施策」(2011)
 グローバル人材育成推進会議(2011)
5. 安倍政権の英語教育政策
 教育再生実行本部の提言(2013)
 教育再生実行会議の提言(2013)
 第2 期教育振興基本計画(2013)
 グローバル化に対応した英語教育改革実施計画(2013)
 スーパーグローバル大学と大学間格差
 英検・TOEFL など外部検定試験による到達目標設定
 小学校外国語活動の早期化・教科化問題
 英語教育の在り方に関する有識者会議の提言(2014)
 生徒の英語力向上推進プラン(2015)
 東京オリンピックに合わせた学習指導要領改訂(2017〜2018)

終章 歴史の教訓と今後への提言
 歴史の教訓
 今後への提言


附録1 日本外国語教育政策史年表
附録2 日本外国語教育政策史資料
あとがき
参考文献
索引



【著者紹介】
江利川春雄(えりかわ はるお)
1956年生まれ。和歌山大学教育学部教授。日本英語教育史学会会長。大阪市立大学経済学部卒業。神戸大学大学院教育学研究科修了。広島大学より博士(教育学)。

〈主な著書〉『英語教育史重要文献集成 第Ⅰ期全5巻』(ゆまに書房、2017、監修・解題)、『英語だけの外国語教育は失敗する』(ひつじ書房、2017、共著)、『「グローバル人材育成」の英語教育を問う』(ひつじ書房、2016、共著)、『英語と日本軍』(NHK出版、2016)、『英語教科書は〈戦争〉をどう教えてきたか』(研究社、2015)、『英語教育、迫り来る破綻』(2013、ひつじ書房、共著)、『受験英語と日本人』(研究社、2011)、『英語教育のポリティクス』(三友社出版、2009)、『日本人は英語をどう学んできたか』(研究社、2008)、『近代日本の英語科教育史』(東信堂、2006、日本英学史学会豊田實賞受賞)など。




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