ひつじ書房 小説とは何か? 芥川龍之介を読む 小谷瑛輔著 ひつじ書房 小説とは何か? 芥川龍之介を読む 小谷瑛輔著
2017年12月刊行

ひつじ研究叢書(文学編)10

小説とは何か?

芥川龍之介を読む

小谷瑛輔著

定価5600円+税 A5判上製 400頁

ISBN 978-4-89476-889-5

ブックデザイン 坂野公一(welle design)

What is Fiction?: A Study of Akutagawa Ryunosuke

Eisuke Kotani

ひつじ書房


2022年6月

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もっとも有名な純文学賞の名が芥川賞である通り、芥川龍之介は文学の象徴のような位置にいる。しかし彼の作品はそもそも小説なのかと当時から疑われ続けてきたのであり、むしろ小説の安定性を脅かす危険な存在でもあった。本書は小説という制度を疑い、そうした懐疑を文学的リソースとしていった芥川作品を解き明かすことで、言葉とは何か、小説とは何か、小説を書く人間の知性とは何かを自己言及的に問い返していく営みとしての小説のあり方を提示する。



目次

はじめに
一 小説とは何か
二 芥川を読むこと
三 文学理論と芥川の作品
四 語ることの暴力性と「弱い内面」
五 理智は敗北したのか
六 「百年の後」の芥川

第一章 不可能としての主題―「羅生門」「鼻」「酒虫」
一 芥川初期小説における語りと主題
二 「羅生門」における反語的修辞としての完結性
三 「鼻」の二転する語り
四 「酒虫」と寓話の不可能性
五 初期芥川的主題における逆説

第二章 作為を隠すという作為―「手巾」
一 「手巾」と演劇論
二 小宮豊隆とバーナード・ショー
三 バーナード・ショーと問題文芸論
四 型と臭味
五 長谷川先生の憂鬱

第三章 「小説」の条件と「人間」性―「芋粥」「或日の大石内蔵之助」
一 「人間」を描くということ
二 「芋粥」
三 「或日の大石内蔵之助」
四 「小説」の不可能性

第四章 「新技巧派」は「迷惑な貼札」か―「羅生門の後に」「饒舌」
一 芥川龍之介とは何者か
二 漱石と自然主義の「技巧」
三 「新技巧派」への接近/棄却
四 「饒舌」の二重性
五 大正七年以降の「新技巧派」

第五章 「新技巧派」の面目―「南瓜」
一 反真実性としての虚構性
二 虚構性の表徴
三 新技巧派の「真面目」
四 「西郷隆盛」、「黄粱夢」

第六章 告白の演技性と〝探偵小説〟―「開化の殺人」
一 探偵と「下等」な知性
二 北畠の演劇性
三 成立の過程と完成原稿
四 三つの「六月十二日」
五 語りの枠組みとキリスト教
六 一人称告白体と演劇性
七 「彼岸過迄」と「ゲダンケ」

第七章 成功する虚構のパラドックス―「龍」「蜜柑」
一 「龍」の自己言及性
二 現実化する虚構のアポリア
三 「蜜柑」の虚構性
四 自己表現を超えて

第八章 近代日本の知と回帰する狂気―「疑惑」
一 三つの時間と作品の謎
二 明治四十年代の実践倫理学者と「狂人」
三 回帰する「狂人」の時間
四 欠けた指
五 伝染する「疑惑」の力学
六 「理智」と「狂気」

第九章 「ボードレールの一行」の源流―「黒衣聖母」
一 多文化・多宗教の混淆
二 ウェルギリウス「アエネイアス」とダンテ「神曲」
三 ボードレール、ヴェルハーレン、上田敏、日夏耿之介
四 南蛮趣味とボードレール
五 「善悪一如」と「ボオドレエルの一行」

第十章 奇蹟と不可能―「きりしとほろ上人伝」「じゆりあの・吉助」 「尾生の信」「往生絵巻」「仙人」
一 芥川作品の一面性をめぐって
二 「神聖な愚人」の系譜
三 「尾生の信」
四 「往生絵巻」、「仙人」
五 奇蹟と不可能

第十一章 切実か、不真面目か―「神聖な愚人」とメタフィクション
一 切実か、不真面目か
二 芥川のメタフィクション作品
三 「葱」の「サンテイマンタリズム」
四 現実―虚構の階層構造の転倒
五 虚構の創造者としての「神聖な愚人」
六 「神聖な愚人」とメタフィクション

第十二章 可能性に賭けられた伝達―「〔題未定〕」と坂口安吾「文学のふるさと」
一 「文学のふるさと」が言及しているのは「〔題未定〕」の内容なのか
二 安吾の見た芥川の自筆原稿
三 「〔題未定〕」本文改変の形跡
四 遺稿編集の事情
五 最期の苦悩
六 可能性に賭けられた伝達

あとがき
初出一覧
索引



著者紹介
小谷瑛輔 (こたに えいすけ)
〈略歴〉一九八二年、兵庫県生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学、日本近代文学専攻。博士(文学)。富山大学准教授。 〈主な著書〉共著に宮坂覺編『芥川龍之介と切支丹物——多声・交差・越境』(翰林書房、平成二十六年)、庄司達也編『芥川龍之介ハンドブック』(鼎書房、平成二十七年)、松本和也編『テクスト分析入門——小説を分析的に読むための実践ガイド』(ひつじ書房、平成二十八年)、西田谷洋編『文学研究から現代日本の批評を考える——批評・小説・ポップカルチャーをめぐって』(ひつじ書房、平成二十九年)、『芥川龍之介——没後九十年 不滅の文豪』(河出書房新社、平成二十九年)など


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