文論序説 大木一夫著 ひつじ書房 文論序説 大木一夫著 ひつじ書房
2017年5月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第144巻

文論序説

大木一夫著

ブックデザイン 白井敬尚形成事務所

A5判上製函入 496頁 定価8400円+税

ISBN 978-4-89476-822-2

ひつじ書房

An Introduction to Sentence Theory
OOKI Kazuo


【内容】

文はいかに成立するのかという問題は、文法論の基本的で重要な問題であるが、なかなか解決にいたらない文法論のアポリアである。この問題に対して、行為としての言語という視座から考えることを試みる。文の成立には、文が文としてもつ言語行為的意味が関わることを説き、そのような立場の射程を示すために、いくつかの文法概念の再構築について論じ、さらに、この立場にもとづく現代日本語の時間表現の精細な記述におよぶ。


■書評が掲載されました。
『日本語の研究』第14巻4号(2018年12月1日)掲載
評者:仁科明


【目次】


緒言

序章 文について考える
 1 文とは何かという問題
 2 文を考える必要性
 3 文と認められてきたもの

Ⅰ 文はどのように考えられてきたか
 1 文成立論というアポリア
 2 一回的文成立論の諸相
 3 一回的文成立論から多段階的文成立論へ
 4 多段階的文成立論の必然性
 5 多段階的文成立論の限界

Ⅱ 文論への視座
 1 文論への視座を求めて
 2 言語行為論
 3 言語行為論による文論への道
 4 話しことばと書きことば

Ⅲ 文成立の意味的側面
 1 文成立について考える
 2 文の規定・文成立論のながれ
 3 言語行為論を視座に考える
 4 発語内行為の構造
 5 発語内目的と文という単位体
 6 「切れる」ということの意味

Ⅳ 認識する文
 1 「判断のある文」
 2 これまでの「判断のある文」の研究
 3 〈推量判断実践文〉〈判定・評価文〉〈認識・発見文〉という分類
 4 認識文と伝達文
 5 認識文・伝達文という視点の及び得る言語現象の種々
 6 認識文を切り出す

Ⅴ 事態を描き出す文
 1 文における言語行為的意味・文の類型という問題
 2 サールの発語内行為の分類と表現型の位置
 3 事態を描き出す文とその類型
 4 発語内行為の分類にもとづく文の類型と文の機能
 5 文の機能の位置づけ、その一端
 6 文の機能と事態を描き出す文

Ⅵ 事態を描かない文
 1 事態を描き出す文・事態を描かない文
 2 事態を描かない文とは何か
 3 事態を描かない文の分類
 4 事態を描かない文はどのような行為をおこなっているか
 5 事態を描かない文の類型とその位置づけ

Ⅶ 文成立の外形的側面
 1 文成立の外形的側面を考える
 2 文成立にかかる形式的な側面
 3 切れることの意味
 4 発語内目的が複数あるとみられる文
 5 切らざるを得ないとき
 6 あらためて、文とは何か

Ⅷ 文の機能の問題圏
 1 文が文としてもつ意味
 2 文の機能とは何か
 3 文の機能を認める意味
 4 文の機能の問題圏(1) 文法概念の再構築
 5 文の機能の問題圏(2) 文法形式記述の厳密化
 6 文の機能という範疇を認めるべきである
 7 文法概念の再構築・文法形式記述の厳密化に向けて

Ⅸ 主観性
 1 「主観性」という文法概念と「不変化助動詞の本質」
 2 「不変化助動詞の本質」の日本語文法論における位置
 3 「不変化助動詞の本質」の論証手続き
 4 客観的表現の論証手続きを不変化助動詞にも適用する「不変化助動詞の本質」の論証の帰結
 5 「不変化助動詞の本質」の現代的意味とその射程
 6 文法論的概念としての「主観性」の適否

Ⅹ モダリティ
 1 「モダリティ」という文法概念
 2 表現類型にかかわるモダリティ
 3 形式か意味か
 4 表現類型にかかわるモダリティとは何であるのか
 5 モダリティはいかに規定されるべきか

Ⅺ 喚体句
 1 喚体句という文法概念の貢献
 2 山田孝雄の喚体句
 3 喚体の問題点とその発展的継承
 4 喚体形式の文の意味
 5 喚体形式の意味の実現
 6 山田孝雄の喚体・述体概念の再整理とその継承

Ⅻ 現代日本語「た」の意味
 1 「た」の意味という問題
 2 ここでの視点
 3 「た」の諸用法
 4 完了・過去用法
 5 認識を新たにする用法
 6 決定・要求
 7 知識修正・反実仮想など
 8 現代日本語「た」の基本的な意味

XIII 現代日本語動詞基本形の時間的意味
 1 現代日本語動詞基本形の時間的意味という問題
 2 動詞基本形のあらわす時間的意味諸説
 3 動詞基本形の無色性・無標性と言語行為的意味
 4 動詞基本形の諸用法
 5 無色性による時間的意味の実現
 6 無標性による時間的意味の実現
 7 動詞基本形という形式の意味と時間的意味の実現のしかた

XIV 述定の時間・装定の時間
 1 主節と従属節の時間的意味という問題
 2 主節時基準・発話時基準と「視点の原理」
 3 あらためて問題提起
 4 タ形の意味・ル形の意味
 5 テンス的意味とアスペクト的意味の実現
 6 述定の時間・装定の時間
 7 主節時基準・発話時基準という考え方を見直す
 8 形式の意味と装定における時間的意味の実現

終章 さしあたっての締括り
 1 ここまで述べてきたこと
 2 話し手の言語学と聞き手の言語学
 3 トップダウンとボトムアップ
 4 擱筆


後記
著者本書関連著述目録
事項索引
人名索引
書名論文名索引



【著者紹介】

大木一夫(おおき かずお)
1966年生まれ。長野県出身。東北大学大学院文学研究科博士後期課程退学。博士(文学)。東北大学助手、埼玉大学助教授などを経て、東北大学大学院文学研究科教授。主な著書に、『山田文法の現代的意義』(共編著、ひつじ書房、2010年)、『ガイドブック日本語史』(ひつじ書房、2013年)、『日本語史叙述の方法』(共編著、ひつじ書房、2016年)等。


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