在日パキスタン人児童の多言語使用 コードスイッチングとスタイルシフトの研究  山下里香 著 在日パキスタン人児童の多言語使用 山下里香 著
2016年2月刊行

在日パキスタン人児童の多言語使用

コードスイッチングとスタイルシフトの研究

山下里香 著

A5判上製カバー装  定価7,800円+税

ISBN 978-4-89476-776-8

ひつじ書房

Code-switching and style-shifting by Pakistani pupils: A study in a Tokyo suburb

Rika Yamashita


【内容】

日本に暮らす移民児童については、日本語教育の文脈で語られがちであるが、本書は移民コミュニティ内でバイリンガル児童がどのような言語使用を行っているのか、社会言語学の観点から記述し分析する。
実際の移民児童の自然会話データを扱った初の研究書であり、日本語・ウルドゥー語バイリンガルのパキスタン人児童らの、家と学校の「間」にあるモスク教室という場での言語間・スタイル間の切り替え現象に注目し、言語使用の実態を明らかにした。


【目次】

まえがき
本書で使用するデータについて

I 研究の背景と在日パキスタン人児童の言語的背景

第1章 問題のありか
1.1 研究の背景─日本に暮らすニューカマー児童のことば
1.2 先行研究─欧米と日本におけるコードスイッチングとスタイルシフト研究
1.2.1 コードスイッチングの定義
1.2.2 本格的なコードスイッチング研究までの流れ
1.2.3 コードスイッチングの意味と機能─Gumperzの概念
1.2.4 コードスイッチングの合理性─モデル化とミクロ化
1.2.5 コードスイッチングのミクロ・マクロをつなぐ
1.2.6 スタイルシフトに関して
1.3 論点と課題─日本における移民児童の多言語使用
1.4 本研究の射程
1.4.1 本研究の目的
1.4.2 本研究の意義
1.4.3 本書の構成

第2章 フィールドの背景および調査の概要
2.1 在日パキスタン人とそのコミュニティの背景・生活
2.1.1 故国パキスタンの言語的背景
2.1.2 在日パキスタン人の人口動態、コミュニティ、アイデンティティ
2.1.3 在日パキスタン人と言語
2.1.4 Gモスクのコミュニティ
2.1.5 Gモスク教室
2.2 モスク教室における調査の概要
2.2.1 録音データの収集
2.2.2 会話データの表記
2.3 データの会話参加者と会話のやりとりに関して
2.3.1 会話参加者
2.3.2 モスク教室における会話の背景

第3章 言語選択の量的分析─どの言語をどれだけ使うのか
3.1 方法と使用データ
3.1.1 方法
3.1.2 使用データ
3.2 年別の比較(縦断的視点)
3.2.1 各言語の割合
3.2.2 データ別・話者間の比較
3.3 授業日別の比較(横断的視点)
3.3.1 授業日による三人の言語使用
3.3.2 他児童の影響
3.3.3 イムラーン(第二次調査)の言語選択
3.4 3章のまとめ

II コードスイッチングの語用論的な機能

第4章 運用能力はコードスイッチングに影響を与えるのか
4.1 運用能力の考慮と考えられるコードスイッチング
4.2 教師の反応を待たないウルドゥー語へのコードスイッチング
4.3 単語を挿入するコードスイッチング
4.4 教師から語彙の意味を尋ねるやりとり
4.4.1 日本語の語彙を聞いた例
4.4.2 互いの言語で聞き合った例
4.4.3 理解し合わない状況が作られた例
4.5 4章のまとめ

第5章 ウルドゥー語・日本語の切り替え─教師と児童の境界をつくる
5.1 成人の呼称
5.1.1 成人に対する呼称の概観
5.1.2 anTiiの使用
5.1.3 「○○先」の使用
5.2 発話相手と会話の管理
5.2.1 「発話相手の限定」に関する問題
5.2.2 発話相手の限定/選択
5.2.3 発話相手、話題、語彙のシフト
5.3 5章のまとめ

第6章 ウルドゥー語・日本語・「ですます体」の切り替え─スタンスの構築
6.1 ウルドゥー語の使用
6.1.1 ウルドゥー語によるアラインメントの構築
6.1.2 ウルドゥー語によるディスアラインメントの構築
6.2 教師とのやりとりから自分の主張へ
6.3 「ですます体」の使用
6.3.1 権利と義務の交渉
6.3.2 他の児童への否定的な評価
6.4 6章のまとめ

III 指標性を用いた多言語使用

第7章 ウルドゥー語での引用─児童が投射する大人の「声」
7.1 コードスイッチングと引用表現
7.2 談話を盛り上げる引用表現
7.3 情報の真正性
7.4 フィクショナルな引用表現
7.5 データ全体の引用表現から見る傾向
7.6 7章のまとめ

第8章 南アジア風の日本語の使用─教師・児童の境界を越える
8.1 Crossingについて
8.2 第一次調査時における接触日本語変種の使用─音声的な特徴
8.2.1 教師に対する主張
8.2.2 教師に対する主張ではないもの
8.3 第二次・第三次調査時における接触日本語変種の使用
   ─定型的な表現とそのバリエーション
8.3.1 教師に対する主張
8.3.2 定型的な表現とその使用のバリエーション
    ─「ちゃんときってよ」をめぐって
8.4 8章のまとめ

第9章 縦横無尽のスタイル使用─先生から芸能人まで
9.1 児童に向けられる様々な「大人の声」
9.2 児童同士の会話に見られるcrossing
9.3 ジャンルを超えた言語使用─狭い空間が広い空間になるとき
9.4 9章のまとめ

第10章 結論
10.1 各章の要約とテーマの相関
10.2 言語別に見た児童の言語使用
10.2.1 ウルドゥー語
10.2.2 接触日本語変種
10.2.3 英語
10.2.4 「ですます体」
10.2.5 その他のスタイル
10.3 移民バイリンガル児童の言語使用の総括
10.4 本研究のインパクト、展望と課題

エピローグ
参考文献
転写規則
切片のリスト
索引




【著者紹介】
山下里香(やました りか)
1985年生まれ。2014年、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程(言語学専門分野)満期退学。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員(DC1)、ロンドン大学バークベックカレッジ応用言語学科訪問研究員を経て、現在東京大学東洋文化研究所にて日本学術振興会特別研究員(PD)。主な論文などに、「モスク教室における在日パキスタン人児童のコードスイッチング」『社会言語科学』第17巻1号(2014年、徳川賞萌芽賞受賞論文)、「言語共同体」、「コード切り替え」、「スタイル」、「多言語使用」、「二言語使い分け」、「リテラシー」の6項目『明解言語学辞典』(斎藤純男・田口善久・西村義樹編、三省堂、2015年)、Japanese/Urdu Language Contact in a Religious Community: LexicalBorrowing and Phonological Adaptation 『東京大学言語学論集』第36号(2015年)がある。


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