ひつじ書房 日本語の共感覚的比喩 武藤彩加著 日本語の共感覚的比喩 武藤彩加著
2015年2月

ひつじ研究叢書(言語編) 第124巻

日本語の共感覚的比喩

武藤彩加著

A5判上製 448頁 定価8,500円+税

ISBN 978-4-89476-748-5

ブックデザイン 白井敬尚形成事務所

Synesthetic Metaphors in Japanese

Ayaka Muto

ひつじ書房


 

「甘い声」のような五感内の表現の貸し借りを共感覚的比喩という。基本色彩語等と並び言語普遍性現象のひとつとされてきたが,本書では,日本語の共感覚的比喩の全体系を明確に示す。結論として,オノマトペや動詞も含め包括的に分析されるべきであるということ,メタファーだけでなく複数の意味作用によって成り立つものであること,比喩の一種ではなく感覚間の転用現象に対するラベルづけと捉え直すべきであること等を主張する。


目次

第1章 はじめに
1.1 問題提起
1.2 本研究の目的
1.3 考察の対象と本書の構成

第2章 従来の共感覚的比喩論と本書の課題
2.1 従来の共感覚的比喩論
 2.1.1 共感覚的比喩とは1
 2.1.2 共感覚的比喩における言語普遍性について
 2.1.3 共感覚的比喩の動機づけについて
 2.1.4 共感覚的比喩の特殊性
2.2 本書の課題
2.3 考察の対象
 2.3.1 従来の研究における2つの立場
  2.3.1.1 データを限定した研究
  2.3.1.2 感覚間における意味の転用すべてを対象とした研究
 2.3.2 本書の立場
  2.3.2.1 共感覚的比喩の定義づけ
  2.3.2.2 創造的な比喩と死喩
  2.3.2.3 用例収集の方法について

第3章 日本語の共感覚的比喩の一方向性仮説に関する考察
3.1 先行研究と本章の課題
 3.1.1 共感覚的比喩の一方向性仮説に関する研究
  3.1.1.1 英語の先行研究
  3.1.1.2 日本語の先行研究
 3.1.2 先行研究の問題点と本章の課題
  3.1.2.1 先行研究の問題点
  3.1.2.2 本章の課題
 3.1.3 分析の前提
3.2 日本語の五感を表すオノマトペの分析
 3.2.1 分析の前に
  3.2.1.1 複数の感覚にまたがるオノマトペ
  3.2.1.2 視覚内での意味変化について
  3.2.1.3 聴覚と視覚
  3.2.1.4 「五感とオノマトペ」からの問題提起
  3.2.1.5 多義性を持つオノマトペにおける五感内の分布
 3.2.2 仮説の検証
  3.2.2.1 嗅覚的経験を表すオノマトペにおける意味の転用
  3.2.2.2 味覚的経験を表すオノマトペにおける意味の転用
  3.2.2.3 触覚的経験を表すオノマトペにおける意味の転用
  3.2.2.4 聴覚的経験を表すオノマトペにおける意味の転用
  3.2.2.5 視覚的経験を表すオノマトペにおける意味の転用
  3.2.2.6 3.2.2のまとめ
3.3 日本語の五感を表す動詞の分析
 3.3.1 分析の前に
 3.3.2 仮説の検証
  3.3.2.1 視覚的経験を表す動詞(みる)における意味の転用
  3.3.2.2 触覚的経験を表す動詞(ふれる)における意味の転用
  3.3.2.3 味覚的経験を表す動詞(あじわう)における意味の転用
  3.3.2.4 聴覚的経験を表す動詞(きく)における意味の転用
  3.3.2.5 嗅覚的経験を表す動詞(かぐ)における意味の転用
  3.3.2.6 3.3.2のまとめ
3.4 日本語の五感を表す形容詞の分析
 3.4.1 分析の前に
 3.4.2 分析
  3.4.2.1 触覚的経験を表す形容詞における意味の転用
  3.4.2.2 味覚的経験を表す形容詞における意味の転用
  3.4.2.3 嗅覚的経験を表す形容詞における意味の転用
  3.4.2.4 聴覚的経験を表す形容詞における意味の転用
  3.4.2.5 視覚的経験を表す形容詞における意味の転用
  3.4.2.6 3.4.2のまとめ
3.5 3章のまとめ

第4章 4つの言語における共感覚的比喩 フランス語、スウェーデン語、英語、および日本語母語話者を対象とした調査の結果から
4.1 はじめに
4.2 先行研究で残された課題
4.3 仮説の提示と本章の課題
4.4 パイロット調査の実施 14の言語における一方向性仮説
 4.4.1 触覚を表す語から他の感覚への意味転用
 4.4.2 視覚を表す語から他の感覚への意味転用
 4.4.3 一方向性仮説に反する例
4.5 4つの言語を対象としたさらなる調査
 4.5.1 調査概要
 4.5.2 調査に使用した語
 4.5.3 触覚的領域からの転用と遠隔感覚からの転用の比較
  4.5.3.1 4言語における触覚的領域から他の感覚への意味転用の割合
  4.5.3.2 4言語における遠隔感覚から他の感覚への意味転用の割合
  4.5.3.3 4言語における嗅覚から他の感覚への意味転用の割合
 4.5.4 4つの言語における触覚からの転用
  4.5.4.1 日本語の触覚を表す語の意味転用
  4.5.4.2 スウェーデン語の触覚を表す語の意味転用
  4.5.4.3 英語の触覚を表す語の意味転用
  4.5.4.4 フランス語の触覚を表す語の意味転用
  4.5.4.5 多く意味転用される触覚を表す語
  4.5.4.6 4.5.4のまとめ
 4.5.5 4つの言語における味覚からの転用
  4.5.5.1 日本語の味覚を表す語の意味転用
  4.5.5.2 スウェーデン語の味覚を表す語の意味転用
  4.5.5.3 英語の味覚を表す語の意味転用
  4.5.5.4 フランス語の味覚を表す語の意味転用
  4.5.5.5 多く意味転用される味覚を表す語
  4.5.5.6 4.5.5のまとめ
 4.5.6 4つの言語における嗅覚からの転用
  4.5.6.1 日本語の嗅覚を表す語の意味転用
  4.5.6.2 スウェーデン語の嗅覚を表す語の意味転用
  4.5.6.3 英語の嗅覚を表す語の意味転用
  4.5.6.4 フランス語の嗅覚を表す語の意味転用
  4.5.6.5 多く意味転用される嗅覚を表す語
  4.5.6.6 4.5.6のまとめ
 4.5.7 4つの言語における視覚からの転用
  4.5.7.1 日本語の視覚を表す語の意味転用
  4.5.7.2 スウェーデン語の視覚を表す語の意味転用
  4.5.7.3 英語の視覚を表す語の意味転用
  4.5.7.4 フランス語の視覚を表す語の意味転用
  4.5.7.5 多く意味転用される視覚を表す語
  4.5.7.6 4.5.7のまとめ
 4.5.8 4つの言語における聴覚からの転用
  4.5.8.1 日本語の聴覚を表す語の意味転用
  4.5.8.2 スウェーデン語の聴覚を表す語の意味転用
  4.5.8.3 英語の聴覚を表す語の意味転用
  4.5.8.4 フランス語の聴覚を表す語の意味転用
  4.5.8.5 多く意味転用される聴覚を表す語
  4.5.8.6 4.5.8のまとめ
4.6 4章のまとめ

第5章 味覚を表す形容詞の意味分析
5.1 仮説の提示と本章の課題
 5.1.1 仮説の提示
 5.1.2 なぜ味覚なのか
 5.1.3 意味の妥当な記述に向けて
 5.1.4 分析の手順
5.2 「甘い」と「辛い」の意味分析
 5.2.1 分析の前に
 5.2.2 「甘い」の分析
  5.2.2.1 「甘い」の多義的別義
  5.2.2.2 「甘い」の多義構造
 5.2.3 「辛い」の分析
  5.2.3.1 「辛い」の多義的別義
  5.2.3.2 「辛い」の多義構造
5.3 「渋い」と「苦い」の意味分析
 5.3.1 分析の前に
 5.3.2 「渋い」の分析
  5.3.2.1 「渋い」の多義的別義
  5.3.2.2 「渋い」の多義構造
 5.3.3 「苦い」の分析
  5.3.3.1 「苦い」の多義的別義
  5.3.3.2 「苦い」の多義構造
 5.3.4 「渋い」と「苦い」の類似点と相違点
5.4 「酸っぱい」の意味分析
 5.4.1 「酸っぱい」の分析
  5.4.1.1 「酸っぱい」の多義的別義
  5.4.1.2 「酸っぱい」の多義構造
 5.4.2 「甘い」「辛い」および「渋い」「苦い」との類似点
  5.4.2.1 「甘い」との類似点
  5.4.2.2 「渋い」「苦い」との類似点
  5.4.2.3 「辛い」との類似点
  5.4.2.4 5.4のまとめ
5.5 「まずい」「うまい」「おいしい」の意味分析
 5.5.1 分析の前に
 5.5.2 「まずい」の分析
  5.5.2.1 「まずい」の多義的別義
  5.5.2.2 「まずい」の多義構造
 5.5.3 「うまい」の分析
  5.5.3.1 「うまい」の多義的別義
  5.5.3.2 「うまい」の多義構造
 5.5.4 「おいしい」の分析
  5.5.4.1 「おいしい」の多義的別義
  5.5.4.2 「おいしい」の多義構造
5.6 5章のまとめ

第6章 五感を表す動詞の意味分析
6.1 本章の課題
6.2 「きく」(聞・聴・訊・効・利)の意味分析
 6.2.1 分析の前に
 6.2.2 「きく」の分析
  6.2.2.1 「きく」の多義的別義
  6.2.2.2 「きく」の多義構造
6.3 五感を表す語における発話行動的意味の分析
 6.3.1 分析の前に
 6.3.2 「きく」「ふれる」「におわせる」の分析
  6.3.2.1 発話手段
  6.3.2.2 内容への言及
  6.3.2.3 共同動作者格「〜ト」
  6.3.2.4 内容(判断態度)と機能(表出態度)
  6.3.2.5 引用格
  6.3.2.6 付随するニュアンス
  6.3.2.7 まとめ
6.4 6章のまとめ

第7章 食に関するオノマトペの意味分析
7.1 先行研究と本章の課題
7.2 評価による分類
 7.2.1 味の評価とは
 7.2.2 属性の内訳
 7.2.3 用例による確認
  7.2.3.1 食品に対するプラス評価を表すオノマトペ
  7.2.3.2 食品に対するマイナス評価を表すオノマトペ
  7.2.3.3 プラス評価とマイナス評価のどちらにも限定できないオノマトペ
 7.2.4 食感覚を表すオノマトペと‘imagery’
  7.2.4.1 Langacker(1988: 63–68):‘imagery’
  7.2.4.2 用例による確認
7.3 感覚による分類 複合感覚表現
 7.3.1 各オノマトペが表す感覚
 7.3.2 メトニミーによる転用
  7.3.2.1 触覚─視覚
  7.3.2.2 触覚─視覚─聴覚
  7.3.2.3 触覚─聴覚
  7.3.2.4 二次的活性化
  7.3.2.5 嗅覚─味覚、味覚─触覚
  7.3.2.6 視覚─聴覚
 7.3.3 メタファーによる転用
7.4 7章のまとめ

第8章 スウェーデン語と韓国語における味を表す表現の類型化
8.1 はじめに
8.2 先行研究概観
8.3 問題提起
8.4 スウェーデン語における味表現の収集と分類
 8.4.1 調査概要
 8.4.2 今回の調査で得られたデータ
 8.4.3 スウェーデン語の味を表す表現に関する考察
  8.4.3.1 スウェーデン語の味を表す表現における共感覚的比喩
  8.4.3.2 分類表に追加されるべき新しいカテゴリー
 8.4.4 8.4のまとめ
8.5 韓国語における味を表す表現の収集と分類
 8.5.1 問題提起
 8.5.2 調査概要
 8.5.3 今回の調査で得られたデータ
 8.5.4 韓国語の味を表す表現に関する考察
  8.5.4.1 韓国語の味を表す表現における共感覚的比喩
  8.5.4.2 分類表に追加される新しいカテゴリー
 8.5.5 8.5のまとめ
8.6 8章のまとめ

第9章 感覚間の意味転用に関わる比喩の分析 共感覚的比喩の動機づけを探る
9.1 本章の課題
9.2 共感覚的比喩を支えるメタファーとメトニミー
 9.2.1 先行研究概観
  9.2.1.1 感覚の仕組み、あるいは脳細胞(ニューロン)
  9.2.1.2 類似性に基づくメタファー
  9.2.1.3 メトニミーとの関わり
  9.2.1.4 説明が難しいとするもの
  9.2.1.5 問題提起と仮説の提示
 9.2.2 前章までの分析から
  9.2.2.1 メタファーに基づく意味転用
  9.2.2.2 メトニミーに基づく意味転用
  9.2.2.3 感覚間が直接結びつかないケース
 9.2.3 さらなる分析
  9.2.3.1 先行研究
  9.2.3.2 感覚器の隣接によるメトニミー
  9.2.3.3 2つの性質の同時性に基づくメトニミー
  9.2.3.4 2つの事項の時間的隣接に基づくメトニミー
  9.2.3.5 生理的メトニミー
 9.2.4 共感覚的比喩における色聴とは
  9.2.4.1 先行研究
  9.2.4.2 共感覚(色聴)と二次的活性化の類似点
  9.2.4.3 オノマトペにおける二次的活性化
9.3 接触感覚から遠隔感覚と遠隔感覚内の意味転用 共感覚的比喩を支える複数の動機づけ
 9.3.1 共感覚的比喩における身体性に基づく制約とは
 9.3.2 接触感覚から遠隔感覚への意味の転用
  9.3.2.1 先行研究
  9.3.2.2 触覚から視覚への転用
  9.3.2.3 視覚の触覚性
 9.3.3 遠隔感覚内の比喩の考察
  9.3.3.1 先行研究
  9.3.3.2 「高い声」の分析
 9.3.4 共感覚的比喩とは何か
9.4 9章のまとめ

第10章 おわりに
10.1 本書のまとめ
10.2 今後の課題


資料
参考文献
実例出典
あとがき
初出一覧
索引


著者紹介
武藤彩加(むとう あやか)
 略歴
名古屋大学大学院国際言語文化研究科日本言語文化専攻博士後期課程修了。立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部常勤講師、琉球大学留学生センター専任講師を経て、現在、琉球大学留学生センター准教授。博士(名古屋大学)。専門は認知言語学、日本語教育。

 主な論文・著書
「味覚形容詞『甘い』と『辛い』の多義構造」(『日本語教育』第110号、2001)、「『おいしい』の新しい意味と用法—『うまい』『まずい』と比較して」(『日本語教育』第112号、2002)「味ことばの擬音語・擬態語」(瀬戸賢一編著『ことばは味を超える』海鳴社、2003)など。



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