日本の英語教育における文学教材の可能性 髙𣘺和子著 日本の英語教育における文学教材の可能性
髙𣘺和子著
2015年2月

シリーズ言語学と言語教育 34

日本の英語教育における文学教材の可能性

髙𣘺和子著

装丁者 吉岡透(ae)/明田結希(okaka design)

A5判上製 定価7,500円+税

ISBN 978-4-89476-737-9

ひつじ書房

The Possibilities of Literary Materials in English Teaching in Japan
Takahashi Kazuko



本書は、近年、日本の英語教育から文学教材が減少した経緯を批判的に分析した上で、文学はコミュニケーション能力育成を目指す英語教育において重要な教材であることを、理論と実践両面から示している。実践面では、中学・高校教員の声や、大学生の意見を踏まえ、文学を活用するための多彩な授業プランを紹介している。英語教育に興味を持つ幅広い読者に薦めたい。



文学教材を用いた英語教育を再評価する時代がきた
英語教育における文学教材のあり方をここまで網羅的に論じた本を、私はいままで読んだことがない。今後、本書を読まずして日本の英語教育における文学テクスト使用の功罪を論じることは許されないであろう。
-----東京大学大学院教授 斎藤兆史


目次

はしがき  

序論  コミュニケーション能力育成時代の文学教材 —その位置づけと問題点—
1.英語教育で文学教材を使用することに対する大学生の意見 —2008年度から2011年度のアンケート結果を踏まえて—
2.本書の目的
3.考察の対象
3.1 期間
3.2 教育機関
4.用語の定義
4.1 文学教材、および題材と教材
4.2 文学教材を使った英語教育
4.3 オーセンティック教材と「オーセンティック」教材
5.1980年代初頭から2000年代初頭までの日本の英語教育 —『中学校学習指導要領』および『高等学校学習指導要領』の記述を中心に—
5.1 「目標」の変遷
5.2 「実践的コミュニケーション能力」はどのように解釈されたか
5.3 「教材」
6.コミュニケーション能力育成と文学教材
6.1 文学教材の敬遠と題材規定 —『高等学校学習指導要領』を中心に—
6.2 文学教材敬遠を生み出した多様な遠因
—授業時数と新語数の削減、大学設置基準の大綱化、「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」—
7.本書の構成

第1章  コミュニケーション能力育成を目指す英語教育と文学教材 —中学校、高等学校、大学の読解教材を中心に—
1.中学校の英語教科書と文学教材—読解教材を中心に—
2.高等学校の英語教科書と文学教材—「リーディング」を中心に—
3.大学の英語教科書と文学教材—大学設置基準大綱化以降を中心に—
3.1 大学設置基準の大綱化以降の大学英語教育
3.2 大学の英語教科書と文学教材

第2章  海外の英語教育および外国語教育における文学教材
1.EFL環境にある国々—韓国・中国の事例を中心に—
2.英語を母語とする国々—イギリス・アメリカの事例を中心に—
2.1 イギリスの外国語教育と文学教材
2.2 アメリカの外国語教育と文学教材

第3章  日本の英語教育におけるオーセンティック教材の解釈 —1980年代から 2000年代に起きた出来事を踏まえて —
1.オーセンティック教材とは何か
1.1 オーセンティック教材の本来の意味
1.2 オーセンティック教材とCLT
1.3 日本の英語教育とオーセンティック教材
1.4 オーセンティック教材と「オーセンティック」教材
2.「オーセンティック」教材の概念形成上、直接的・間接的に影響を与えた事象—1980年代から2000年代初頭を中心に—
2.1 国際競争の激化と経済界からの提言
2.2 “World Communications Year: Development of Communications Infrastructures”(1983年)
2.3 JETプログラム(1987年開始)とALT
2.4 ITの発展—コーパスの普及を中心に—
2.4.1 コーパスの意味
2.4.2 A Comprehensive Grammar of the English LanguageとCollins COBUILD English Language Dictionary
2.4.3 コーパスと日本の英語教育

第4章  「オーセンティック」教材と文学教材の境界再考 —“literariness”を尺度として —
1.Carter and Nash(1990)の“literariness”
2.「オーセンティック」教材の題材と“literariness”—雑誌記事を中心に—
3.“literariness”以外の尺度を求めて—creativityとnarrativity—

第5章  creativityからとらえ直した「オーセンティック」教材と文学教材
1.creativityの意味の変遷
1.1 神から人間がもつ能力へ
1.2 多彩な領域で用いられるcreativityという概念
2.creativityの定義
2.1 既存の言語表現を踏まえて新たな表現を創造すること
2.2 ユーモアと関連性をもつこと
2.3 creativityを理解する相手が必要なこと
2.4 さまざまな尺度で解釈が可能であること
2.5 程度ではかる特色であること
2.6 本書におけるcreativityの意味
3.creativityと、コミュニケーション能力育成のための英語教育
4.「オーセンティック」教材重視の教科書とcreativity
4.1 大学英語教科書
4.2 高等学校「リーディング」用教科書
5.「オーセンティック」教材の題材とcreativity(1) —文学作品の理解を前提とする例を中心に—
5.1 既存の言語表現を踏まえて新たな表現を創造する例
5.1.1 文学の登場人物名を素材にした例  —メルヴィル(Herman Melville)のMoby-Dick, or the Whaleを中心に—
5.1.2 文学の作品名を素材にした例  —ウルフ(Virginia Woolf)のA Room of One’s Ownを中心に—
5.2 ユーモアと関連性をもつ例
5.2.1 文学作品を素材として、ユーモアを込めた表現を作り出した例
6.「オーセンティック」教材の題材とcreativity(2) —最近の文学作品との比較—
6.1 日常会話の例
6.2 雑誌広告の例
6.3 文学作品の中の会話の例

第6章  narrativityからとらえ直した「オーセンティック」教材と文学教材
1.多彩な領域におけるnarrative
1.1 narrativeと日常性
1.2 多彩な領域におけるnarrative—文学から政治まで—
2.narrativityの定義
2.1 narrativityの特色
2.2 本書におけるnarrativityの意味
3.narrativityと、コミュニケーション能力育成のための英語教育
4.「オーセンティック」教材重視の教科書とnarrativity
4.1 大学英語教科書
4.2 高等学校「リーディング」用教科書
5.「オーセンティック」教材の題材とnarrativity
—新聞記事、テレビ・コマーシャル、日常会話を中心に—
5.1 新聞記事
5.2 テレビ・コマーシャル
5.3 日常会話
5.4 雑誌記事
6.「オーセンティック」教材と文学教材の接点 —第4、5、6章の分析結果を踏まえて—

第7章  文学教材を使った英語教育の実践例 —大学から、高等学校、そして中学校まで—
1.大学の英語教育における文学教材
1.1 IT世代の大学生たち
1.2 従来の大学英語教育用文学教材
1.3 最近の大学英語教育用文学教材
1.4 最近出版された、大学英語教育用文学教材
1.4.1 English through Literature
1.4.2 Simply Shakespeare —Two Tragic Stories: Hamlet and Romeo and Juliet—
1.4.3 『名文で養う英語精読力』
1.4.4 海外で出版された文学教材 —Bookworms Club Seriesを中心に—
1.5 近年出版された文学教材がこれからの文学教材に与える示唆
1.5.1 リトールド版は文学教材か?
1.5.2 文学教材に基づいた練習問題は、どのように作成するのか?
1.5.3 文学教材を用いた今後の英語の授業に求められる点
2.文学教材を用いた大学での英語教育(1) —統一教科書、Global Outlook 2: Advanced Readingを中心に—
2.1 使用教科書と授業の概要
2.2 物語の結末を書き換える—“Lost Keys”を中心に—
2.3 その他の短編小説を使った授業
2.3.1 紙芝居でクライマックスを語る —“A Clean Break”を中心に—
2.3.2 日本語を取り入れた課題—“Crickets”を中心に—
3.文学教材を用いた大学での英語教育(2) —既成の教科書と自作教材を組み合わせた例を中心に—
3.1 Signature Reading: Level Gと自作教材
3.1.1 使用教科書と授業の概要
3.1.2 出来事のつながりを考える—“The Crane Maiden”と“Blue Beard”を使った授業—
3.1.3 文学教材はプレゼンテーションを取り入れた授業形態で扱えるか—“The Midnight Visitor”を中心に—
4.文学教材を用いた大学での英語教育(3)—自作教材を中心に—
5.中学・高等学校の英語教育における文学教材
5.1 中学・高等学校の英語教員は文学教材をどのように見ているのか
5.2 文学教材を用いた中学・高等学校での英語教育(1)—教科書で扱われている文学教材の教え方—
5.2.1 教案作成上、考慮する点 —The Fall of Freddie the Leafを中心に—
5.2.2 教科書で扱われている文学教材の指導案 —The Fall of Freddie the Leafを中心に—
5.3 文学教材を用いた中学・高等学校での英語教育(2)—1回の授業で扱う文学教材—
5.3.1 中学校でAlice in Wonderlandを使う授業案
5.3.2 中学・高等学校で日本昔話を使う授業案
5.4 文学教材を用いた中学・高等学校での英語教育(3)  —授業時間最後の5分間で使える文学教材—
5.4.1 creativityに関する章であげた例を中心に
5.4.2 文学の登場人物名や作品名などを素材にした例 —写真や絵を中心に—

結論  日本の英語教育における文学教材 —今後の課題と展望—
1.要約
2.改善点と課題
3.文学教材はどこへ行くのか

Appendix  
参考文献  
謝辞  
索引  

                                                                                                                                                                                                                                                                                   

著者紹介
髙𣘺和子(たかはし かずこ)
明星大学教育学部教育学科准教授。 主要著作・論文:『言語と文学』(朝倉書店、2009年、分担執筆)、Is the English of Literary Works Really ‘Unique’?: Doubts about Its Exclusion from Second Language Learning. Language and Information Sciences 5 (2007年)、「 短編小説を用いた大学英語の授業―Katherine Mansfieldを中心に―」『言語情報科学』8(2010年)など。



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