ひつじ書房 明治の翻訳ディスクール 高橋修著 明治の翻訳ディスクール 高橋修著
2015年2月

明治の翻訳ディスクール

坪内逍遙・森田思軒・若松賤子

高橋修著

A5判上製 392頁 定価4600円+税

ISBN 978-4-89476-729-4

Discourse of theTranslated Literature in the Meiji Era

Osamu Takahashi

ひつじ書房


☆2016年3月、第24回やまなし文学賞受賞☆

山梨日日新聞電子版

 

〈人称〉の翻訳とは? 関係指向性の強い日本語の文法において、〈人称〉の問題は歴史的に特別な位置を占めてこなかった。〈人称〉という概念そのものが西洋文化摂取の過程で移入されたといえる。ならば、〈人称〉を意識化することが、表現史的にどのような意味があったか。井上勤訳『魯敏孫漂流記』(明治16年)、坪内逍遙訳『贋貨つかひ』(明治20年)、森田思軒訳『探偵ユーベル』(明治22年)等を取り上げながら解き明かす。


目次


 はじめに

第一部 〈人称〉の翻訳
 発見される〈人称〉 

第一章 〈人称〉の翻訳・序説 
 はじめに 
 一 ダニエル・デフォー『ロビンソン・クルーソー』 
 二 ジャン・ジャック・ルソー『告白』 
 三 ジュール・ヴェルヌ『地底旅行』へ 

第二章 〈人称〉的世界と語り―ジュール・ヴェルヌ『拍案驚奇地底旅行』 
 一 『拍案驚奇地底旅行』の典拠 
 二 変換詞としての人称 
 三 空想的科学小説 

第三章 変換される〈人称〉―坪内逍遙訳『贋貨つかひ』 
 はじめに 
 一 物語の枠 
 二 〈人称〉の翻訳 
 三 言語交通としての〈翻訳〉 

第四章 〈探偵小説〉の試み―坪内逍遙『種拾ひ』 
 一 『読売新聞』と逍遙 
 二 探偵小説としての『種拾ひ』 
 三 探偵小説と「自叙体」 

第五章 「周密体」と人称―森田思軒訳『探偵ユーベル』 
 一 問題の発端 
 二 「周密訳」をめぐって 
 三 ユゴーの受容 
 四 「探偵小説」というあり方 

第六章 〈自己物語〉の翻訳―森鷗外訳『懺悔録』 
 一 蘭語から英語へ 
 二 自己物語の〈翻訳〉 
 三 告白の〈ことば〉 

第七章 〈人称の翻訳〉の帰趨―坪内逍遙『細君』 
 一 「環境の描写」 
 二 「語り手のポジション」 
 三 交差する語り 

第二部 言語交通としての翻訳

第一章 「媒介者」としての翻訳 

第二章 〈教養小説〉の翻訳―丹羽純一郎訳『欧州奇事花柳春話』 
 はじめに 
 一 二つの〈恋愛〉 
 二 対立する「情」と「理」 
 三 促される「立志」 
 四 教養小説としての『花柳春話』 

第三章 『花柳春話』を生きる―坪内逍遙『新磨妹と背かゞみ』 
 一 プレテクスト『花柳春話』 
 二 「道理」と「情欲」 
 三 ノイズとしての「立聞き」 
 おわりに 

第四章 「探偵小説」のイデオロギー―内田魯庵訳『小説罪と罰』 
 はじめに 
 一 『無惨』の探偵たち 
 二 「探偵小説」としての『小説罪と罰』 
 三 『罪と罰』の受容空間 

第五章 翻訳される「子どもらしさ」―若松賤子訳『小公子』 
 はじめに 
 一 新しい神話『小公子』 
 二 『小公子』のジェンダー 
 三 聖家族『小公子』 
 おわりに 

第三部 冒険小説の政治学
 冒険小説/探偵小説 

第一章 明治期のロビンソナード 
 一 英雄魯敏孫 
 二 食人種フライデー 
 三 翻訳/再記述 

第二章 ナショナリズムの翻訳―矢野龍溪『報知異聞浮城物語』 
 はじめに 
 一 「文学極衰」論争のなかの『浮城物語』 
 二 「国権」的冒険政治小説 
 三 『浮城物語』のナショナリズム 

第三章 「海洋冒険小説」の時代―『冒険奇談十五少年』の背景 
 一 「南洋」の発見 
 二 起て「海国」の少年 
 三 冒険から殖産へ 

第四章 「冒険」をめぐる想像力―森田思軒訳『冒険奇談十五少年』 
 はじめに 
 一 〈外部〉の在処 
 二 「冒険」と博物学 
 三 「冒険」をめぐる想像力 

 初出一覧 
 あとがき 
 索引


著者紹介
高橋修 (たかはしおさむ)

〈略歴〉
一九五四年、宮城県生まれ。上智大学大学院博士後期課程修了。博士(文学)。専攻は日本近代文学。共立女子短期大学文科教授。

〈主な著書〉
『主題としての〈終り〉―文学の構想力』(新曜社、二〇一二年)、コレクション・モダン都市文化59『アナーキズム』(編著、ゆまに書房、二〇一〇年)、『少女少年のポリティクス』(共編著、青弓社、二〇〇九年)、文学年報2『ポストコロニアルの地平』(共編著、世織書房、二〇〇五年)、新日本古典文学大系明治編『翻訳小説集二』(校注、岩波書店、二〇〇二年)、『ディスクールの帝国―明治三〇年代の文化研究』(共編著、新曜社、二〇〇〇年)など。


表紙、扉画―井上文香
井上文香イラストレーション/Inoue Fumika Illustration 見上げると、空。

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