ひつじ書房 日本語の名詞指向性の研究 新屋映子著 日本語の名詞指向性の研究 新屋映子著
2014年2月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第115巻

日本語の名詞指向性の研究

新屋映子 著

A5判上製 404頁 定価6,200円+税

ISBN 978-4-89476-676-1

ブックデザイン 白井敬尚形成事務所

ひつじ書房

Studies on Noun Orientation of Japanese Language

Teruko Shinya



日本語の文には名詞を文構成の柱とするものが少なくない。名詞の統語的機能はまず第一に主語や目的語になることであるが、述語としての名詞には名詞の枠におさまらない広がりがある。述語名詞は何を表わし、どのように働くのか。日本語の名詞文は文章のなかでどのような態様を見せるのか。名詞および名詞文の観察を通して、日本語らしさの一端を名詞が担っていることを明らかにする。


目次

はしがき

I 述語名詞の機能

第1章 日本語の述部における名詞の態様
1. はじめに
2. 名詞の統語的機能
3. 日本語の名詞文の類型 述部における名詞使用
3.1 述語名詞の意味範疇
3.2 主語と名詞述語の意味関係
4. 述部を形成する名詞の使用度
5. 動詞中心か名詞中心か
6. おわりに

第2章 形容詞述語と名詞述語 その近くて遠い関係
1. 形容詞述語・名詞述語の意味機能
1.1 形容詞述語の意味機能
1.2 名詞述語の意味機能
2. 形容詞述語の性質規定と名詞述語の性質規定
2.1 名詞を述語とする性質規定文の形
2.2 性質規定と類別
3. 形容詞文の表現性と名詞文の表現性
4. 名詞述語の本質と自在性
5. おわりに

第3章 形容詞派生の名詞「〜さ」を述語とする文の性質
1. はじめに
2. 「〜さ」の統語的性質
3. 「〜さ」述部の中立的用法と評価的用法
4. 「〜さ」述部の2 用法と形容詞述語
5. 評価的な「〜さ」文の性質
5.1 文脈的前提
5.2 性状の主体
5.3 文末形式
5.4 連体部と「〜さ」の意味関係
6. まとめ
7. おわりに

第4章 名詞句の性状規定性に関する一考察
1. はじめに
2. 「長髪」「長い髪」の使用の実態
3. 複合名詞と名詞句
4. 複合名詞の性状規定性
5. 名詞句の性状規定性
6. まとめ

第5章 主体尊敬述語形式「お〜だ」をめぐって
1. はじめに
2. 主体尊敬述語形式の生産性
3. 「お〜だ」は名詞述語か
4. 「お〜だ」の統語機能
5. 「お〜だ」の表わす時間性
5.1 「お〜だ」のテンス
5.2 「お〜だ」の内包する時間性
6. 視点制約の緩和
7. 「お〜だ」使用の背景
8. 日本語教育の観点から

第6章 文末名詞
1. 「文末名詞」
2. 文末名詞文の意味的分類
3. 文末名詞と連体部の意味関係
4. 文末名詞と文の成分
5. 文末名詞文の意味構造
6. 文末名詞の述語名詞としての性格
7. まとめ

II 名詞文の諸相

第7章 意味構造から見た平叙文分類の試み
1. はじめに
2. 名詞述語文の意味構造に関する先行研究
3. 考察の対象
4. 平叙文の分類
4.1 有題叙述文:「A はB。」
4.2 同定文:「A はB だ。」
4.3 有題後項指定文、陰題前項指定文
4.4 無題後項指定文
4.5 中立叙述文
4.6 文脈依存文
5. 唯一叙述・本質規定・定義
6. おわりに

第8章 ナル表現の内実
1. はじめに
2. 主述語の品詞
3. 日英両文の構文関係の比較
4. 日本語名詞文の様相
5. 自動詞「ある」の用いられ方

第9章 日本語の無主語文
1. はじめに
2. 主語の有無による文分類
2.1 省略について
2.2 主語の有無による文分類
3. 主語の有無を基準とした各類型の分布
4. 述語の品詞
5. 無主語文
6. 無主語名詞文(端折り文、逆順的な文、文脈内陰題文)の機能
7. おわりに

第10章 随筆の名詞文
1. はじめに
2. データについて
3. 名詞文の使用率
4. 随筆における名詞文の類型
4.1 有題叙述文
4.1.1 有題叙述文〈1〉
4.1.2 有題叙述文〈2〉
4.2 指定文
4.2.1 有題後項指定文
4.2.2 陰題前項指定文
4.2.3 無題後項指定文
4.3 中立叙述文
4.4 無主語名詞文
4.5 名詞句独立文
4.6 その他
4.7 まとめ
5. 文章例
6. おわりに

第11章 名詞句独立文をめぐって 意味的な完結性をもたらすもの
1. はじめに
2. 名詞句独立文の表現性
3. 名詞句独立文とモダリティ
4. 意味的に完結していない名詞句独立文
5. 意味的に完結している名詞句独立文
5.1 情意表出型の名詞句独立文
5.1.1 モーダルな副詞・連体詞を含み持つ名詞句独立文
5.1.2 情意・評価を表わす名詞で終止する名詞句独立文
5.1.3 「こと」で終止する名詞句独立文
5.1.4 意志的な行為を表わす動作名詞の反復
5.2 演述型の名詞句独立文
5.2.1 期間を表わす名詞で終止する名詞句独立文
5.2.2 引用節を持つ名詞句独立文
5.2.3 条件節+名詞
5.2.4 場所名詞+ニ+名詞
5.3 訴え型の名詞句独立文
6. おわりに

第12章 「という」の介在する連体修飾の意味類型
1. はじめに
2. 先行研究におけるトイウ連体修飾の位置付け
3. トイウ連体修飾の意味類型
4. トイウ連体修飾における「という」の必須度

III 「状態」をめぐって

第13章 総合雑誌に見る名詞「状態」の用法 約100 年を隔てた2 誌を比較して
1. はじめに
2. 「状態」の語構成 単純語か複合語後項か
2.1 「状態」を後項とする複合語
2.1.1 「状態」を後項とする複合語の種類
2.1.2 「状態」を後項とする複合語の前項 字数、字種、語種
2.1.3 「状態」を後項とする複合語の意味構造
2.2 単純語としての「状態」
3. 「状態」の統語機能
3.1 ガ格とニ格
3.1.1 ガ格
3.1.2 ニ格
3.2 述語用法の「状態」
3.2.1 「状態」を述語とする文の類型
3.2.2 「状態」を文末名詞に持つ文の表現機能
4. まとめ

第14章 類義語「状況」「状態」の統語的分析 コーパスによる数量的比較
1. はじめに
2. 「状況」「状態」の使用の実態・分析・考察
2.1 「状況」「状態」の出現形態
2.2 「状況」「状態」の統語機能
2.2.1 格成分としての「状況」「状態」
2.2.2 述語としての「状況」「状態」
2.3 「状況」「状態」と連体部との意味関係
2.4 「状況」「状態」を後項とする複合語の意味構造
2.5 「状況」「状態」と結合する述語の意味範疇
3. まとめ
4. おわりに

第15章 直接引用形式を前項に持つ複合名詞 「〜状態」をめぐって
1. はじめに
2. どのような言語単位か
2.1 複合名詞か
2.2 複合名詞の類型
2.3 語彙的複合語と統語的複合語
2.4 臨時一語
3. 単純語から複合語へ
4. 「(直接引用形式)状態」の意味構造
4.1 前項と後項の意味関係
4.2 引用部発話者の人称
5. 「(直接引用形式)状態」の表現機能
6. おわりに

IV 日本語教育と名詞文

第16章 日本語教科書の名詞文
1. はじめに
2. 指導項目としての名詞文
3. 教科書に見られるさまざまな名詞文
3.1 典型的な名詞文
3.2 主語の性状を表わす名詞文
3.3 主語の動態を表わす名詞文
3.4 文末名詞文
3.53.6 間接的指定文(ウナギ文)
3.7 無主語名詞文
4. 日本語教育における名詞文のあり方

第17章 応答表現「そうです」の意味と用法
1. はじめに
2. 「そうです」の用法に関する一般的な説明
3. 「そうです」の一般的な用法説明に関する疑問点
4. 先行論考
5. 「そうです」で応答し得る表現機能
6. 「そうです」による応答の可否
7. おわりに

初出一覧
参考文献
索引


著者紹介
新屋映子(しんや てるこ)桜美林大学リベラルアーツ学群教授 主な著書 『日本語教師がはまりやすい日本語教科書の落とし穴』(共著、アルク、1999 年)、『日本語運用文法―文法は表現する―』(共著、凡人社、2003 年)など。



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