ひつじ書房 「国語学」の形成と水脈 釘貫亨著 「国語学」の形成と水脈 釘貫亨著
2013年12月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第113巻

「国語学」の形成と水脈

釘貫亨 著

ブックデザイン 白井敬尚形成事務所

A5判上製 288頁 定価6,800円+税

ISBN 978-4-89476-660-0

ひつじ書房



本書は、国語学が18世紀以来の国学系古典語学の業績を継承して成立したことに注目する。国語学は、19世紀後半に言語学と合流して制度として発足したが、伝統の継承を自覚する人々が言語学の理論と対峙しながら独自の理論を形成した過程を叙述する。本書は、山田孝雄、有坂秀世、時枝誠記、奥田靖雄らが理論的正統化の根拠とした知識の水脈を復元する。また、国語学の記述法を普及させた橋本進吉の学説史的位置づけを行う。

目次

まえがき

第1章 近代日本語学説史の提案
1. 研究問題としての「国語学」
2. 日本語研究の始発と展開
3. 近代的日本語研究の創始者本居宣長
4. 明治期の日本語観察
5. 大正・昭和期の国語学
6. 教養主義と専門的記述主義

第2章 本居派古典語学の近代的性格
1. 問題の所在
2. 明治維新と仮名遣い
3. 日本音韻学および音声学と音韻論
4. 明治以降の本居派テニヲハ学
5. 自動詞・他動詞と宣長の「自他」
6. 啓蒙的学術としての本居派古典語学

第3章 本居宣長のテニヲハ学
1. 日本語テクスト解釈の歴史的成立
2. テニヲハ研究の近世的展開
3. 『詞の玉緒』のテニヲハ論
4. 『てにをは紐鏡』の発想
5. 『古今集遠鏡』の思想
6. 『玉あられ』の思想

第4章 本居宣長の音韻学
1. 『字音仮字用格』の啓蒙的意図
2. 漢字の民衆への下降
3. 音変化を経た後の字音表記
4. 字音仮名遣いと古代日本語音声の復元の関係
5. まとめ

第5章 明治以降の音韻学
1. はじめに
2. 敷田年治『音韻啓蒙』
3. 『古事類苑 文学部一』の「音韻論」
4. 『音韻調査報告書』の学史的意義について
5. phonetics以降の音韻学
6. 音韻学の再理論化としての有坂秀世の「音韻論」

第6章 phonologyと有坂秀世の「音韻論」
1. はじめに
2. 1930年前後の学界動向
3. 「音声の認識について」
4. 「Phoneme について」
5. プラハ学派批判について(上)
6. プラハ学派批判について(下)
7. おわりに

第7章 有坂の神保格批判と金田一京助との論争
1. はじめに
2. 神保格「共通な要素」批判
3. 神保説の雑居的性格への批判
4. 金田一京助への反論

第8章 時枝誠記とソシュール『一般言語学講義』
1. はじめに
2. ソシュール学説の受容までの日本の言語研究の蓄積
3. 時枝誠記と言語過程説
4. 有坂秀世の音声理論
5. トルベツコイの音声学批判の論点
6. 有坂のプラハ学派批判
7. 現象学と近代的日本語研究

第9章 山田文法における「統覚作用」の由来
1. はじめに
2. 語、句、統覚作用
3. 統覚作用と言語的統一の関係について
4. 統覚作用Apperceptionの由来と原義

第10章 国語学とドイツ哲学
1. 日本語研究の近代化と研究理念への模索
2. 山田孝雄とカントの哲学
3. 時枝誠記の言語過程説と現象学
4. 有坂秀世「音韻論」と現象学
5. 伝統的日本語研究と西洋哲学

第11章 日本文法学における「規範」の問題
1. はじめに
2. 古典語学の規範観念の近代的展開
3. 反規範主義文法学説の登場
4. 教科研文法の単語の定義について
5. 奥田靖雄の単語論の特徴
6. 語彙的なものと文法的なもの
7. 教科研文法が保有する規範観念について

第12章 近代日本語研究における教養主義
1. 山田孝雄の「文」の定義とドイツ哲学
2. 時枝誠記と有坂秀世を結ぶ現象学の系譜
3. 教科研文法とマルクス主義
4. 教科研文法の単語の定義の特徴と由来
5. 日本語研究における教養主義の系譜

第13章 専門知「国語学」の創業
1. 橋本進吉のフィロロギー批判
2. 上代特殊仮名遣いの再発見と橋本の石塚龍麿批判
3. 橋本の国学批判とフィロロギー批判をつなぐもの
4. 専門知「国語学」の創業

あとがき
人名索引
事項索引


著者紹介
釘貫亨(くぎぬき とおる)1954年、和歌山市生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程中退。博士(文学)。富山大学人文学部講師、助教授を経て名古屋大学文学部助教授、教授。改組により名古屋大学大学院文学研究科教授。



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