文章チュータリングの理念と実践—早稲田大学ライティング・センターでの取り組み 佐渡島紗織・太田裕子 編 文章チュータリングの理念と実践 佐渡島紗織・太田裕子 編
2013年3月

文章チュータリングの理念と実践

早稲田大学ライティング・センターでの取り組み


佐渡島紗織・太田裕子 編

A5判並製カバー装 定価2,800円+税

ISBN 978-4-89476-648-8

ひつじ書房




大学生は、アカデミックな文章を書く事ができるようになることが求められている。かつては、多くの場合自分で学ぶしかなかった。しかし、現在、大学では、組織的にライティングを教える必要に迫られている。そのような状況の中、独立した機関でライティングを学ぶことの出来る機会を提供することが大学の課題になっている。この課題にいち早く取り組んできた日本におけるパイオニアである早稲田大学ライティング・センターでの取り組みの実践とその裏付けとなる理念を詳述。ピア・チュータリングを行うチューターが実際に困った実例やその解決方法の例を提示。さらに、チューターをどのように採用し、育てていくかといった情報も満載。


【目次】

はじめに

第 1 章 チュータリングの理念
1.ライティング指導を支える理念
2.ライティング・センターを支える理念

第 2 章 チュータリングの姿勢と技能

第 1 節 個人ファイルの有効活用
[1]個人ファイルを使って、セッションの準備をしよう
[2]個人ファイルの情報を書き手との対話、チューターとの話し合いに活用してみよう

第 2 節 文章診断
[1]文章診断のチェックポイント
[2]文章診断する時の注意点

卒業チューターコラム 
文章診断に自信を持つために
文章診断の際の不安から解放されるには

第 3 節 音読
[1]書き手に音読の意義を伝え、音読をしてもらう
[2]書き手が音読をしている最中にチューターは文章診断を行う
[3]音読を強制してはいけない

第 4 節 セッションの目標
[1]セッションで目標を立てる
[2]どのようにして目標を立てるか
[3]書き手から問題を引き出す
[4]目標の決定権は書き手にある
[5]チューターと書き手の間で目標がずれないようにする
[6]書き手と交渉して目標を立てる一例

卒業チューターコラム
セッションの目標と優先順位、そして書き手とチューターの成長

第 5 節 締め切り間際の課題への対応
[1]限られた時間内に修正できる点には限りがあることを書き手に
[2]セッションの進行
[3]文章の良い点を褒める
[4]言葉が出てこない書き手
[5]大幅な修正を拒む書き手
[6]時間通りにセッションを終える

第 6 節 ページ数の多い文章
[1]いつもと同じ準備をしよう
[2]黙読しよう
[3]まずは文章全体の構成を書き手に確認しよう
[4]序論・本論・結論に書かれている内容を確認しよう
[5]問題のある表現は一箇所だけを取り上げよう
[6]専門用語や略語を書き出してもらおう

第 7 節 相槌や微笑み
[1]書き手の話をよく聞き、受け止める
[2] 相槌やおうむ返しによって、書き手の意図を十分に引き出す
[3]セッション中、書き手の顔を見ながら文章検討を行う
[4]微笑みを忘れずに対話を行う

第 8 節 よい点の指摘
[1]問題点を指摘しなければと気張るのをやめよう
[2] どんな文章にもよい点があるという心持ちで文章を読もう
[3]文章を読み終わった後、まずよい点を指摘しよう
[4]よい点を具体的に指摘しよう

卒業チューターコラム
探偵になった気分でセッションに臨もう!

第 9 節 自分の専門と遠い分野の文章
[1]大まかに研究の骨子をつかもう
[2]専門用語を説明してもらおう
[3]リソースを活用しよう
[4]専門分野の慣習を調べるよう、書き手を促そう

卒業チューターコラム
自分の専門と遠い分野の文章を恐れないために

第 10 節 質問をする
[1]なぜ質問が大切なのか
[2]質問の意図を明確にしよう
[3]やりとりを大切にしよう
[4]はっきりと質問しよう

卒業チューターコラム
日本語授業における「表現したいこと」を探る質問

第 11 節 ブレーン・ストーミング
[1]ブレーン・ストーミングで全てを解決
[2]ブレーン・ストーミングを行う際の注意点

卒業チューターコラム
ブレーン・ストーミング―日常生活における活用法 ―

第 12 節 沈黙とつき合う
[1]よい沈黙を作ることは大切であると認識する
[2]沈黙を続ける
[3]沈黙にヒントを出す
[4]沈黙の成果をほめる

第 13 節 非母語話者とのセッション
[1]ライティング・センターの理念を確認しよう
[2]書き手のオーナーシップを護ろう
[3]課題の確認をしよう
[4]チューターの話し方を工夫しよう

研究ノート 1
ネイティブ・チェックにとどまらないチュータリングを目指して ―日本語非母語話者とのセッションを事例に―

第 14 節 リソースの活用
[1]セッションで使うリソースの準備
[2]学術的文章を作成するうえで役に立つリソース
[3]書き手に書く内容に関する知識を提供するリソース
[4]自宅または自習中に使えるリソースの提案

第 15 節 セッションに作業を取り入れる
[1]作業を取り入れて自分の文章を説明してもらおう
[2]音読中に作業をしてもらおう
[3]一緒にマップを作ってみよう
[4]問題を可視化しよう
[5]メモを取ろう/取らせよう

第 16 節 セッションの時間配分
[1]セッションの基本的な時間配分を知ろう
[2]セッションの途中で時間を確認しよう
[3]セッションで取り組むことを再度絞ろう
[4]余った時間を有効に活用しよう

卒業チューターコラム
書く過程における一セッションの意味

第 17 節 書き手に「おみやげ」を持たせる
[1] ブレーン・ストーミングを行ってマップを作成しよう
[2]教科書などを見せよう
[3]構成のアウトラインを作ろう
[4]書き手の文章に直接書き込もう
[5] 書き手が文章を書く際に気をつけるべき項目を書きとめよう
[6]セッション内で探した文献をリストにしよう

第 18 節 授業とのかかわり
[1] 書き手が授業の課題を持ってきた時は課題内容を確認しよう
[2] 課題の要件を満たしつつ、ライティングの知識を提供しよう
[3]書き手の成績を気にしすぎない
[4]チューターの役割と教員の役割を区別しよう
[5]書き手の意思・課題の内容・チューターの文章診断のバランスを取ってセッションの目標を設定しよう

研究ノート 2
ライティング・センターのセッションに対する満足度 ―〈教員〉〈学生〉〈チューター〉の比較―

第 19 節 セッションのしめくくり
[1]残りの時間で何を検討するかを書き手と話し合う
[2] セッションのまとめをする
[3]挨拶を交わしセッションをしめくくる

第 3 章 早稲田大学ライティング・センターにおけるチューター育成
第 1 節 チューター採用
1. 募集と採用審査
2. 応募資格と募集方法
3. 応募に関する問い合わせと対応
4. 採用審査

第 2 節 新人研修
1. 新人チューターオリエンテーション
2. セッションの見学
3. セッションの実地研修
4. 担当するセッションの数

第3節 週研修
1. はじめに
2. 週研修のテーマ
3. 週研修の例
4. 週研修の変遷̶変わったものと変わらないもの

第 4 節 採用後の審査
1. 独り立ち審査
2. 教育補助審査

第 5 節 録音されたセッションのアーカイブ
1. アーカイブとは
2. アーカイブの使い道
3. アーカイブを使ったピア・トレーニング
4. アーカイブを使った研究

第 4 章 早稲田大学ライティング・センターの運営
第 1 節 広報
1. 発信活動をする意義
2. 発信方法
3. 発信活動を行ううえでの留意点

第 2 節 授業との連携 1.ライティング・センターの宣伝における連携
2. 課題の一環としてライティング・センター利用を位置づける授業との連携
3. ライティング・センター利用を禁止する授業との連携
4. 特別な配慮が必要な学生への支援における連携

第 3 節 設備・備品・資料
1. 受付の備品
2. 個別ブースの備品
3. アーカイブ・スペースの備品
4. チューター控室の備品
5. 研修室の備品

第 4 節 受付
1.ライティング・センターの概況
2. 受付の仕事
3. 予約システムとキャンセルへの対応
4. 受付業務の注意点

第 5 節 個人ファイル 1. 個人ファイルの中身
2. 個人ファイルの管理方法

第 6 節 リスク・マネージメント
1. 密室で行わない
2. 書き手はチューターを選べない
3. 課題の詳細を確認する
4. 教員や課題を批判しない
5. 評価に関する助言はしない
6. ライティング・センター外で個人的に指導しない
7. 書き手の個人情報や文章は慎重に扱う

第 5 章 ライティング・センター、チュータリングに関する議論
第 1 節 アメリカでの発足-ライティング・センター誕生の経緯-
1. 初期のライティング・センターの誕生と衰退
2. 現在のライティング・センターの設立
3. アメリカのライティング・センターの歴史から学べる教訓

第 2 節 非母語話者に対する支援

第 3 節 専門領域の文章をどう指導するかに関わる議論

第 4 節 文章をフィードバックする方法
1. フィードバックの方法
2. 誰がフィードバックするのか

第 5 節 授業、他箇所との連携
1. ライティング・センターの位置づけ
2.授業、他箇所との連携

利用者声の声
おわりに
索引
執筆者紹介

【編者紹介】

佐渡島 紗織(さどしま さおり)
早稲田大学留学センター准教授。早稲田大学ライティング・センター、ディレクター。
太田 裕子 (おおた ゆうこ)
早稲田大学オープン教育センター 助教。


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