ひつじ書房 韓国における日本語教育必要論の史的展開 河先俊子著 韓国における日本語教育必要論の史的展開 河先俊子著
2013年2月

韓国における日本語教育必要論の史的展開

河先俊子著

A5判上製カバー装 定価7,200円+税

ISBN 978-4-89476-632-7

ひつじ書房





本書は、韓国における日本語教育の歴史を、韓国の人々の日本語教育に対する認識の変遷を通して記述したものである。書かれた史料とオーラル・ヒストリーを分析し、韓国が近代化を進める中で、日本語教育をめぐる言説が、「民族の主体性」に対する認識と日韓関係に対する認識とを織り込んで形成され、変容する様相を示した。そして、なぜ植民地解放後の韓国で日本語教育が再開され発展したのか考察した。

【目次】

第1 章  学習者の認識を通して日本語教育史を記述する意義
1 問題関心
2 先行研究
2.1 植民地支配期を対象とした日本語教育史研究
2.2 植民地解放後を対象とした日本語教育史研究
3 本書の目的

第2 章  日韓関係、必要性・適合性、民族の主体性 —分析の枠組み—
1 研究の方法
2 分析の視角
2.1 国際関係の中の日本語教育
2.2 必要性・適合性
2.3 民族の主体性
2.4 日本語教育の隣接領域
3 史料の収集
3.1 書かれた史料
3.2 オーラル・ヒストリー
4 研究の限界
5 時代区分と本書の構成

第3 章  近代化、民族意識と日本語教育—開化期と植民地支配期—
1 開化期—近代化と日本語教育―
1.1 近代教育機関の設立と日本語教育—日語学校を中心として―
1.2 留学生の近代化志向
1.3 日本語の教科書における近代化志向
2 植民地支配期—民族意識の高まりと日本語教育—
2.1 教育政策の変遷と朝鮮の人々の反応
2.2 植民地支配の浸透と民族意識
2.3 日本語教師の認識
3 小括

第4 章  日本語教育必要論の萌芽とその否定
—1960 年以前—
1 韓国語の取り戻しと日本語の排除
1.1 韓国語の地位回復
1.2 日本語排除論とその実施過程
1.3 国語教育の再開と国語の普及
2 文教部の日本語教育否定論―日本語解読参考書問題―
3 李承晩政権の対日政策
3.1 貿易政策における日本排除路線
3.2 請求権交渉における対日強硬路線
3.3 文化政策・教育政策における防日路線
4 市民間に芽生える日本語教育必要論
4.1 安氏の日本留学
4.2 『分かりやすい日本語』
5 小括

第5 章  日本語教育必要論の登場 —1960 年から1971 年—
1 日本語教育必要論の登場
1.1 韓国外国語大学日本語科開設の論理
1.2 日本語科学生林氏の認識
1.3 日本語講習所の台頭
2 日本語教育必要論出現の文脈
2.1 韓国語の地位回復と日本排除の限界
2.2 張勉政権の対日積極策
2.3 世代交代 123 3 日本語講習所に対する取締りと反日言説
4 小括
第6 章  日本語教育必要論の多様化 —1972 年から1979 年—
1 日本語教育強化政策の決定過程
1.1 日本語教育強化政策
1.2 経済開発と日本語教育
1.3 経済開発と国民意識としての主体性の確立を目指す教育政策
1.4 文化政策
1.5 対日留学政策
1.6 対日外交の強化
2 日本語教育をめぐる知識人の議論
2.1 自国発展型必要論・現状追随型必要論
2.2 日本語教育警戒論
2.3 日本語教育限定論
2.4 日本語教育限定論の制度化
2.5 関係改善志向型必要論
2.6 ソウル大学入試事件と英語優先論
3 日本語学習者の必要論と国民意識としての主体性
4 日本側の日本語普及支援
5 小括

第7 章  日本研究型必要論の登場 —1980 年代—
1 日本語教育の拡大
2 国際化に備える教育
2.1 留学緩和措置
2.2 外国語教育強化政策
2.3 地域研究の活性化
3 変質する高等学校の日本語教育
3.1 第4 次教育課程
3.2 第5 次教育課程
3.3 教科書における日本語の機能
4 日本研究型必要論
5 日韓文化交流と対日報道
5.1 日韓文化交流
5.2 日本に関する新聞報道
6 日本語学習者の認識
7 小括
第8 章  交流・相互理解型必要論の台頭 —1990 年代—
1 民主化以降の韓国社会と日韓関係
2 日本語教育の普及
3 外国語教育強化政策
4 交流・相互理解型必要論とその展開
4.1 第6 次教育課程
4.2 第7 次教育課程
4.3 高等学校の日本語の教科書
4.4 日本語教師による交流・相互理解型必要論の実践

5 日本語教育を取り巻く諸言説
5.1 ソウル大入試事件
5.2 韓国語の中の日本語に対する抵抗
5.3 日本の大衆文化に対する反応
5.4 対日観
6 日本語学習者の認識
6.1 学習動機調査
6.2 インタビュー・データの分析
7 小括

第9 章 日本研究者による交流・相互理解型必要論の形成過程
1 分析の方法
2 交流・相互理解型必要論の形成プロセス
2.1 日本研究者としての行為と認識
2.2 「日本」の多面的理解―他律的日本観から自律的日本観へ―
2.3 日本人との相互作用
2.4 日韓両文化の間でバランスをとる
2.5 問題の棚上げ—対立する価値観への対処―
2.6 結果図とストーリー・ライン
3 小括
第10 章 日韓関係、民族の主体性と日本語教育
1 なぜ日本語教育が再開され、発展したのか
1.1 日本語教育をめぐる言語空間の変遷
1.2 民族の主体性と日本語教育
1.3 日韓関係と日本語教育
2 日本語を習得した肯定的な自己像
3 展望と今後の課題

付録(国定教科書目次)
参考文献
あとがき
索引



【著者紹介】
河先俊子(かわさき としこ)
国士舘大学21世紀アジア学部准教授。〈主な論文〉「植民地解放後の韓国における日本語教育の再開―日本語教育をめぐる言説の分析―」『言語文化と日本語教育』39(2010年)、「日韓両文化に対する態度構築のプロセス―留学経験がある韓国人日本研究者の場合―」『異文化間教育』31(2010 年) 。


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