ひつじ書房 メタファーと身体性 鍋島弘治朗著 メタファーと身体性 鍋島弘治朗著
2016年9月刊行

メタファーと身体性

鍋島弘治朗著


A5判上製カバー装 456頁 定価5,800円+税

ISBN 978-4-89476-621-1

ひつじ書房
Metaphor and Embodiment
KJ Nabeshima


日本における認知メタファー理論研究の第一人者による最新作。認知科学の重要なキーワードになりつつある “身体性” を、アフォーダンス、ミラーニューロンなどを含めて脳科学の研究成果を紹介しながら概説。さらにアリストテレスからレイコフに至る理論に接続し、身体性メタファー理論の原理を提示する。メタファーとシミリ、メタファーの実験的パラダイムの紹介、進化との関連、コーパスを利用したメタファー研究、政治、マーケティングなど、幅広い研究動向にも切り込んだ大著。


【目次】


第1部 メタファー研究の基礎

第1章 はじめに―アリストテレスの仕掛けた謎

第2章 メタファー入門

1. 文学作品に見るメタファー
2.  J-POPに見るメタファー
3. 日常言語に見るメタファー
 3.1 〈議論は戦争〉メタファー
 3.2 〈時間は金銭〉メタファー
 3.3 上下のメタファー
 3.4 〈恋愛は旅〉メタファー
 3.5 その他のメタファー
4. 文学や歌詞のメタファーと日常のメタファーの連続性
5. まとめ

第3章 認知メタファー理論

1. 語彙とイメージ
2. 推論
3. フレーム
4. 多義
5. 先フレームと元フレーム
6. 写像
7. 基盤
8.〈理解は見ること〉メタファー
 8.1 〈理解は見ること〉の多義
 8.2 〈理解は見ること〉の写像
 8.3 〈理解は見ること〉の基盤
9. 〈喜びは上・悲しみは下〉メタファー
 9.1 〈喜びは上・悲しみは下〉の多義
 9.2 〈喜びは上・悲しみは下〉の写像
 9.3 〈喜びは上・悲しみは下〉の基盤
10. まとめ

第4章 メタファー理論の変遷

1. アリストテレス (Aristotle)
 1.1 相違の中の類似
 1.2 洞察と喜び
 1.3 イメージ性
 1.4 シミリはメタファーの一種
 1.5 アナロジー
 1.6 アリストテレスのまとめ
2. I. A. リチャーズ(I. A. Richards) 
 2.1 メタファーがなければ言語は死んだも同然
 2.2 主意と媒体および根拠
 2.3 死喩の検討
 2.4 基盤の多様性
 2.5 I. A. リチャーズのまとめ
3. マックス・ブラック(Max Black)
 3.1 ブラックによる代替説の解説
 3.2 ブラックによる比較説の解説
 3.3 相互作用説
 3.4 ブラックのまとめ
4. モンロー・ビアズリー(Monroe C. Beardsley)
 4.1 言語対立説
 4.2 比較説批判
 4.3 二段階モデル
 4.4 ビアズリーに対する批判
 4.5 ビアズリーのまとめ
5. ドナルド・デヴィッドソン(Donald Davidson)
 5.1 メタファーはリテラルである
 5.2 類似性批判
 5.3 メタファーとリテラル
 5.4 メタファーとシミリ、隠れた意味、美的性質
 5.5 デヴィッドソンのまとめ
6. ジョン・サール(John Searle) 
 6.1 語用論的現象としてのメタファー
 6.2 代替説批判と比較説批判
 6.3 類似性に基づかないメタファーの存在
 6.4 サールのまとめ
7. グループ・ミュー(Groupe μ)
 7.1 様式Π(パイ)の分解
 7.2 様式Σ(シグマ)の分解
 7.3 二重提喩説
 7.4 グループμのまとめ
8. ゲントナーらのアナロジー理論
9. グラックスバーグらのカテゴリー包含説
 9.1 カテゴリー包含説
 9.2 二段階モデルの実験的反証
 9.3 グラックスバーグらのまとめ
10. スペルベルとウィルソンの関連性理論
 10.1 ルース・トーク
 10.2 推意の計算
 10.3 関連性理論によるメタファーの説明の問題点
 10.4 スペルベルらのまとめ
11. フォコニエとターナーの融合理論
 11.1 融合理論の例
 11.2 融合理論によるメタファーの分析
 11.3 フォコニエらのまとめ
12. 山梨正明
 12.1 類似性
 12.2 生物的・物理的特性と顕現特性
 12.3 選択制限と違反
 12.4 メタファーとシミリ
 12.5 山梨のまとめ
13. 瀬戸賢一
 13.1 認識の三角形
 13.2 悟性的メタファーと感性的メタファー
 13.3 瀬戸のまとめ
14. 楠見孝
 14.1 属性メタファーと構造メタファー
 14.2 情緒・感覚的意味
 14.3 カテゴリー乖離
 14.4 二重パスモデル
 14.5 楠見のまとめ
15. 近年のメタファー研究
16. メタファーにまつわる10の謎
 16.1 二重性の謎
 16.2 語用論の謎
 16.3 言換えの謎
 16.4 構造性の謎
 16.5 真理値の謎
 16.6 シミリの謎
 16.7 秘匿性の謎
 16.8 慣用性の謎
 16.9 基盤の謎
 16.10 主観性の謎
17. まとめ

第2部 身体性メタファー理論

第5章 身体性メタファー理論―序説―

1. 類似性批判
 1.1 空虚な概念としての類似性
 1.2 リテラルな類似性
 1.3 類似性批判のまとめ
2. 相違
 2.1 過去の研究者のまとめ
 2.2 状況と発話の二重性
 2.3 物の相違から状況の相違へ
3. 身体性メタファー理論におけるメタファーの定義 試論1
 3.1 「目の前」とは
 3.2 「状況」とは
 3.3 「経験」とは
 3.4 「別の経験」とは
4. 身体性メタファー理論におけるメタファーの定義 試論2
 4.1 「重ねる」とは
 4.2 「違うと知りつつ」という仮想性
 4.3 「違うことをいったん忘れて」という仮想の忘却と「入り込み」
 4.4 「現実」認知の反映としてのメタファー
5. 身体性メタファー理論における定義 試論3
6. 定義の適用
 6.1 アメフト部の大山君の例
 6.2 厳しい専務の例
 6.3 知恵者の組合長の例
 6.4 逆上サラリーマンの例
 6.5 「アキレスはライオンだ」の例
7. 身体性メタファー理論の優位性
 7.1 代替説
 7.2 逸脱説
 7.3 比較説
 7.4 相互作用説
 7.5 カテゴリー包含説
 7.6 構造写像理論(認知メタファー理論とアナロジー理論)
 7.7 融合理論
 7.8 身体性メタファー理論
 7.9 身体性メタファー理論の優位性のまとめ
8. まとめ

第6章 身体性―心とシミュレーション

1. ギブソンらの生態心理学
 1.1 肌(き)理(め)
 1.2 運動と不変項
 1.3 視覚性運動感覚
 1.4 知覚と行為の循環的プロセス
 1.5 協応
 1.6 知覚システムと等価性
 1.7 アフォーダン
 1.8 文化環境
 1.9 文化的図像の間接性と二重性
 1.10 ギブソンらのまとめ
2. ミラーニューロン
 2.1 運動野と頭頂葉のネットワーク
 2.2 場所クラスター
 2.3 対象クラスター
 2.4 ミラークラスター
 2.5 マルチモーダル性
 2.6 シミュレーション
 2.7 抽象化
 2.8 ミラーニューロンのまとめ
3. 月本の仮想身体運動意味論
4. カテゴリー特異性研究
5. シミュレーションとアフォーダンス
6. プルバミューラーらによるカテゴリー特異性の意味記憶回路
7. バーサローの知覚記号システム理論
8. 記号接地問題
9. 脳と抽象化
 9.1 ラネカーから見る抽象化
 9.2 ガリーズらから見る抽象化
 9.3 プルバミューラーらから見る抽象化
10. 詳細化と合成
 10.1 ラネカーの合成構造
 10.2 バーサローの概念合成
 10.3 グレンバーグの同定仮説
 10.4 思考実験―背骨を走る湧き水
11. 心の理論と社会シミュレーション
 11.1 心の理論
 11.2 社会シミュレーション理論
 11.3 佐伯の擬人的認識論
12.  情動
 12.1 ジェームズ・ランゲ説
 12.2 ソマティック・マーカー仮説
 12.3 感情反応の例
 12.4 情動の重要性を主張するそのほかの論文
 12.5 情動と評価性
 12.6 情動のまとめ
13. 意識の神経的基盤(NCC)
 13.1 ギャラガーの2つの自己
 13.2 エデルマンと大東の二重構造説
 13.3 ダマジオの自己と意識
 13.4 認知言語学における主観性研究
14. まとめ

第7章 フレーム―現実認識はどのように形成されるか

1. フレームの先行研究
 1.1 ベイトソンのフレーム
 1.2 ゴッフマンのフレーム
 1.3 ミンスキーのフレーム
 1.4 フィルモアのフレーム
 1.5 フレームに関する先行研究のまとめ
2. スキーマの先行研究
 2.1 カントの図式
 2.2 メルロ=ポンティの身体図式
 2.3 ピアジェのシェマ
 2.4 ノーマン、ラメルハートらのスキーマ
 2.5 スキーマに関する先行研究のまとめ 
3. スクリプト
4. フレームの種類
 4.1 これまでに登場したフレーム
 4.2 生存と種の保存に関わるフレーム
 4.3 経済に関わるフレーム
 4.4 集団に関するフレーム
 4.5 娯楽と移動に関するフレーム
 4.6 情報に関するフレーム
 4.7 フレームが関わる多義および発展的事例
5. フレームの構成要素
 5.1 アーティファクト
 5.2 役割
 5.3 アーティファクトと役割をつなぐフロント
 5.4 フレームを支える要素のまとめ
6. フレームとスキーマの整合性
 6.1 調節とディフォルト値
 6.2 協応と埋め込み
 6.3 フレームとスキーマおよびスクリプトの位置関係
 6.4 フレームとスキーマの整合性のまとめ
7. フレームによる用例の説明
8. フレームの神経的基盤
9. フレームと仮想性 
10. まとめ

第8章 スペース―現実と空想の関係性

1. 写真スペースと基本概念
2. 絵画スペース
3. 信念スペース
4. 映画スペース
5. 時間スペース
6. 場所スペース
7. スペースの埋め込み
8. 仮定スペース
9. 応用例
10. スペース導入表現
11. スペースとフレームの相違
 11.1 現実と仮想の区分
 11.2 匿名性と記名性
 11.3 埋め込みの種類
 11.4 オンラインとオフライン
12. ギブソンの二重性とベイトソン=ゴッフマンの二重性の統合
13. スペースの神経的基盤
 13.1 スペースの神経的基盤―記憶
 13.2 スペースの神経的基盤―未来、計画、仮想
14. まとめ

第9章 身体性メタファー理論―再説―

1. 現実認識のフレーミング・モデル
2. 仮想スペース設定としてのメタファー
 2.1 条件節文との並行性
 2.2 空想との連続性
 2.3 認識動詞文との並行性
 2.4 暗黙の二重性
3. 身体性メタファー理論におけるメタファーの機構
 3.1 仮想スペースの創出
 3.2 仮想における身体性の活性化
 3.3 仮想フレームから現実フレームへの身体性の写像
4. 仮想フレームが現実フレームから離れていなければならない理由
5. メタファーとアナロジー
6. 真理値の謎
7. まとめ 

第3部 メタファー研究の発展

第10章 メタファーとシミリ

1. 多岐にわたるメタファー明示表現
 1.1 不明瞭なシミリの定義
 1.2 メタファー明示表現の先行研究
 1.3 『豊穣の海』に見るメタファー明示表現
 1.4 メタファー明示表現としての認識表現
 1.5 メタファー明示表現としての構文
 1.6 多岐にわたるメタファー明示表現のまとめ
2. 「長距離シミリ」
3. メタファー明示表現が明示する写像の範囲
 3.1 メタファー明示表現の修飾範囲
 3.2 メタファー明示表現は仮想スペース設定を助ける
4. 類似性標識とメタファーの独立性
5. メタファーの写像性と融合
 5.1 高層ビルの蟻
 5.2 羽をむしられた蜻蛉
 5.3 棘だらけの種子
 5.4 奔馬の波
 5.5 真珠を裏返す
 5.6 融合理論による分析のまとめ
6. メタファー明示のマイナス効果
 6.1 空想における明示性
 6.2 極小メタファーと極小「シミリ」
 6.3 メタファー明示表現は入り込みを妨げる
7. メタファーとシミリに関する心理学的研究
8. まとめ

第11章 メタファーの慣用性―コーパス研究からの検討

1. コーパス研究から見る体系性
2. コーパス研究から見る固着化
 2.1 コロケーション
 2.2 コリゲーション
 2.3 複合語
 2.4 コーパス研究から見る固着化のまとめ
3. 死喩
 3.1 ゴートリーの死喩
 3.2 ダイグナンの死喩
 3.3 レイコフの死喩
 3.4 死喩の争点
 3.5 deepは死喩か
 3.6 「把握」は死喩か
 3.7 「烙印」は死喩か
 3.8 死喩のまとめ
4. 身体性から考える体系性
 4.1 身体性における体系性
 4.2 ダイグナンの体系性とレイコフの体系性の違い
5. 身体性から考える固着化
 5.1 メタファー明示表現としての固着化
 5.2 会話におけるメタファーの動的探索
6. コーパス研究からの示唆
 6.1 評価性
 6.2 談話性
7. まとめ

第12章 メタファーの証拠―心理学的実験から

1. 〈優しさは暖かさ〉の証拠
 1.1 〈優しさは暖かさ〉の言語的証拠
 1.2 ウィリアムスらの対人知覚実験
 1.3 ジョングらの疎外実験
2. 〈喜びは上・悲しみは下〉の証拠
 2.1 〈喜びは上・悲しみは下〉の言語的証拠
 2.2 カササントらのビー玉と想い出の実験
3. 〈善は清・悪は汚〉の証拠
 3.1 〈善は清・悪は汚〉の言語的証拠
 3.2 ジョングらの清潔と倫理の実験
 3.3 シュナールらの反倫理性緩和実験
4. 〈善は白・悪は黒〉の証拠
 4.1 〈善は白・悪は黒〉の言語的証拠
 4.2 シャーマンらの色と倫理性の実験
5. 〈重要性は重さ〉の証拠
 5.1 〈重要性は重さ〉の言語的証拠
 5.2 ジョストマンらのクリップボードの実験
6.  〈時間は空間〉の証拠
 6.1 〈時間は空間〉の言語的証拠
 6.2 ボロディツキーの時間移動に関する実験
7. メタファーの基盤
 7.1 〈優しさは暖かさ〉の基盤
 7.2 〈善は清・悪は汚〉の基盤
 7.3 進化性基盤
 7.4 〈重要性は重さ〉の基盤
 7.5 〈喜びは上・悲しみは下〉の基盤
 7.6 〈時間は空間〉の基盤
 7.7 メタファーの基盤のまとめ
8. 知覚フレーム
9. まとめ

第13章 メタファーと思考―危ないメタファーと現代社会

1. メタファーと政治
 1.1 政治のメタファー
 1.2 リベラルと保守の基本メタファー軸
 1.3 アメリカの犯罪問題
2. ケーススタディ―日本の政治発言
 2.1 ケーススタディ1―「産む機械」メタファー
 2.2 ケーススタディ2―辺野古移設問題で使用されたメタファー
3. 好感度メタファー―メタファーとマーケティング
 3.1 旅
 3.2 その他
4. 深層メタファー―メタファーと軍事
 4.1 IARPAの組織
 4.2 IARPAの目的
 4.3 IARPAの内部組織
 4.4 メタファー計画
5. 主観性の謎
6. まとめ―危ないメタファー

第14章 おわりに

付録 脳の構造と機能

1. ニューロン
2. 大脳の構造
3. 大脳の機能
 3.1 運動
 3.2 視覚
4. 情動
 4.1 自律神経系
 4.2 脳幹から大脳基底核まで
 4.3 大脳辺縁系
 4.4 島皮質と大脳内側面

参考文献
謝辞
索引



著者紹介
〈略歴〉1961年生まれ。三重県四日市市出身。1993年大阪大学言語文化研究科修士課程修了。1997年カリフォルニア大学バークレー校言語学部博士課程前期修了(フルブライト)。2001年関西大学専任講師。2010年から関西大学教授。2007年〜2008年ジャン・ニコ研究所(IJN、フランス)客員研究員。2009年、2012年日本人工知能学会研究会優秀賞受賞。
〈主要著書・翻訳書〉『日本語のメタファー』(くろしお出版、2011年)。訳書に『比喩によるモラルと政治』(共訳、ジョージ・レイコフ著、木鐸社、1998年)など


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