ひつじ書房 複合辞からみた日本語文法の研究 田中寛 著 複合辞からみた日本語文法の研究 田中寛 著
2010年8月

ひつじ研究叢書(言語編)第85巻

複合辞からみた日本語文法の研究

田中寛 著

A5判上製・632ページ 定価9,800円+税

ISBN 978-4-89476-479-8

ひつじ書房


☆大東文化大学広報新聞「大東文化」2011/1/22に益岡隆志先生による書評が掲載されました☆こちらから
日本語の論理的な表現形式としての複合辞は、中上級日本語教育の指導要目としても重要な位置を占める。本書は副詞節を中心とした接続成分と否定表現を軸にした文末成分の意味機能について考察を加えたもので、同時にヴォイス、モダリティ、とりたて助詞といった文法カテゴリーをも内包しながら、日本語文法を複合辞という視点から再構築しようという試みである。類義表現も多く収録し、巻末には詳細な複合辞文献目録を付す。



目次

序章 複合辞からみた日本語文法の研究
―文型研究と文法研究の接点をもとめて
 1 はじめに
 2 文法と文型、あるいは研究と教育の関係
 3 「基本文型の研究」と「話しことばの文型」
 4 「日本語表現文型」と「複合辞」
 5 中国における日本語文型研究
 6 多言語社会における文型研究
 7 「構造文型」、「表現文型」から「機能文型」へ
 8 文脈重視の文型と文法研究
 9 文型研究における語彙と構文
 10 おわりに

第1部 接続表現 副詞節の諸相(1)

第1章 動詞テ形後置詞の分類と意味機能
―機能的認定と様態的意味の諸相
 1 はじめに
 2 動詞の実質的意味からメタファー的意味へ
 3 動詞テ形後置詞の使用・出現分布
 4 動詞テ形後置詞の傾向的分析
 5 時間関係を表す動詞テ形後置詞
 6 主題化、対比、とりたての諸相
 7 起因的な意味を表す動詞テ形後置詞
 8 引用、想定の動詞テ形後置詞
 9 おわりに―動詞テ形後置詞の機能的分類にむけて

第2章 漸進性と相関関係を表す後置詞
─「につれて」「にしたがって」などをめぐって
 1 はじめに
 2 問題の所在
 3 「につれて」の意味と機能
 4 「にしたがって」の意味と機能
 5 「にともなって」の意味と機能
 6 「につれて」「にしたがって」「にともなって」の比較と使用の異同
 7 その他の漸進性と相関関係を表す表現形式
 8 おわりに

第3章 “きっかけ”を表す構文
―〈類義語〉と〈類義文型〉についての一考察
 1 はじめに
 2 「を機に」「を機会に」「を契機に」の意味と用法
 3 「をきっかけに」の意味と用法
 4 「を境に」の意味と用法
 5 「をピークに」「を最後に」「を潮に」の意味と用法
 6 「を振り出しに」「を皮切りに」などの意味と用法
 7 「を引き金に」「を切り口に」などの意味と用法
 8 「をばねに」「をてこに」などの意味と用法
 9 〈XをYに〉の意味と形態上の諸問題
 10 おわりに―類義語と類義文型をめぐって

第4章 結果誘導節における発話意図
―主観的評価をめぐる一考察
 1 はじめに
 2 「結果」の意味と用法
 3 「すえ(に)」「はてに」「あかつきには」の意味と用法
 4 「あげく(に)」の意味と用法
 5 「あまり」の意味と用法
 6 「手前」と「ばかりに」にみる責任の所在説明
 7 「だけに」「だけあって」と「だけで」の評価的意味
 8 「からには/からは」「以上(は)」「うえは」の意味と用法
 9 おわりに

第2部 接続表現 副詞節の諸相(2)

第1章 レバ条件文における文脈的意味
―論理関係と節末・文末叙述の構造
 1 はじめに
 2 レバ条件文にみられる事態の普遍性
 3 レバ条件文の概観
 4 主文文末述語の特徴的な形態
 5 レバ条件節による主題、命題の展開
 6 レバ条件節の限定条件と意味的な機能
 7 レバ条件節の独立形式―条件形後置詞と副詞句表現
 8 おわりに

第2章 擬似的な連体節と従属接続成分
―「理由で」「代わりに」「反面」などをめぐって
 1 はじめに
 2 「Nデ」節の意味と機能
 3 「Nニ」節の意味と機能
 4 「N(無格)」節の意味と機能
 5 おわりに

第3章 “瞬間”と“同時”を表す複合辞
―事態生起の偶発性と恣意性の観点から
 1 はじめに
 2 時間軸の設定と事態生起の偶発性・恣意性
 3 意志の非介在と瞬間性からの展開(1)
 4 意志の非介在と瞬間性からの展開(2)
 5 事態生起に内在する主体の恣意性
 6 “同時併発”を表す諸表現
 7 多義性の諸問題―「と思うと」の文法化をめぐって
 8 その他の短い時間幅を表す時間節
 9 おわりに―時間節の体系的記述に向けて

第3部 文末表現とモダリティの構制(1)

第1章 「しかたがない」「やむをえない」考
―〈諦念〉をめぐる省察
 1 はじめに
 2 語彙と文脈―〈諦念〉の心的背景
 3 「しかたがない」にみる〈諦念〉の諸相
 4 「ようがない」の意味と用法
 5 「やむをえない」の意味と用法
 6 「無理もない」「おかしくない」「不思議ではない」などの意味と用法
 7 「ざるをえない」の意味と用法
 8 「よりほかない」「しかない」「まで(のこと)だ」の意味と用法
 9 「を余儀なくされる」の意味と用法
 10 おわりに

第2章 条件と可能性・蓋然性のモダリティ
―「かもしれない」「かねない」とその周辺
 1 はじめに
 2 「かもしれない」の意味と用法
 3 「かねる」と「かねない」の本質
 4 「かねない」の意味と用法
 5 条件と「かねない」の文脈性
 6 「かもしれない」「かねない」の周辺(1)
 7 「かもしれない」「かねない」の周辺(2)
 8 おわりに

第3章 確信と確実性判断の交渉
―「にちがいない」と「はまちがいない」を中心に
 1 はじめに
 2 「にちがいない」の意味と機能
 3 社説にみる「にちがいない」「はまちがいない」の分布
 4 「にちがいない」と「はまちがいない」にみる主観性の相違
 5 対照研究からの考察―「にちがいない」と「はまちがいない」
 6 「に決まっている」の意味と用法
 7 「にかたくない」「のはかたい」「っこない」の意味と用法
 8 おわりに

第4章 言語行動論からみた発話行為と文法
―〈禁止〉の構文をめぐって
 1 はじめに
 2 直接発話行為と間接発話行為
 3 〈禁止〉の標示(表示)・標識の実態
 4 不特定多数者を対象とした〈禁止〉表現
 5 「てはならない」「てはいけない」の意味と用法
 6 社説にみる「てはいけない」「てはならない」
 7 「てはならない」「てはいけない」の使用分布
 8 「てはならない」「てはいけない」の周辺
 9 おわりに

第4部 文末表現とモダリティの構制(2)

第1章 心的表出と評価判断のモダリティ(1)
―命題の評価性をめぐって
 1 はじめに
 2 テ形接続の構文(1)
 3 テ形接続の構文(2)
 4 「ては」「ても」に接続する心情の強調
 5 「ないでは」「ずには」に接続する心情の強調
 6 「限りだ」「ったら(ない)」などの評価性について
 7 おわりに―命題の評価性をめぐって

第2章 心的表出と評価判断のモダリティ(2)
―“引用”という観点からの考察
 1 はじめに
 2 「とは」と「なんて」―意外性と詠嘆を表す表現
 3 引用的な観点からみた心的表出の諸相(1)
 4 引用的な観点からみた心的表出の諸相(2)
 5 新聞の社説にみられる「という」の複合辞
 6 おわりに

第3章 否定文末形式の意味と機能(1)
―判断・評価の表現の諸相
 1 はじめに
 2 「Xではない」否定文末形式(1)
 3 「Xではない」否定文末形式(2)
 4 「Xがない」否定文末形式
 5 否定の形式と疑問文の用法
 6 おわりに

第4章 否定文末形式の意味と機能(2)
―否定の論理構造と倫理的な意味
 1 はじめに
 2 否定文末形式の概観
 3 「Nはない」の派生的なタイプ
 4 状況の否定と意志の否定
 5 不可能を含意する否定形式
 6 意志の限定と判断の諸相
 7 婉曲的な否定と“否定連鎖”
 8 おわりに

附章 名詞述語文と“説明”のモダリティ表現
―「ことだ」「ものだ」から「寸法だ」「毎日だ」まで
 1 はじめに
 2 「ことだ」の諸相
 3 「ものだ」の諸相
 4 「ところだ」「ばかりだ」の諸相
 5 文法化した名詞述語文の諸相
 6 名詞述語文の追認・余情的用法
 7 おわりに

巻末資料 複合辞研究文献目録
 【節末にあらわれる複合辞】
 【文末にあらわれる複合辞】
 【その他の複合辞に関連する研究文献・参考文献】
 【辞典類・参考書類】

事項索引
文型・関連副詞索引

あとがき

【著者紹介】
田中寛(たなか ひろし)大東文化大学外国語学部日本語学科・同大学院外国語学研究科日本言語文化学専攻教授。博士(文学・立命館大学)。


ご注文は、最寄りの書店さんでお願いします。
お店に在庫が無くても、お取り寄せができます。
書店が最寄りにない場合は、オンライン書店でご注文ください。

 

 



お急ぎの場合は、小社あてにご注文いただくこともできます。
郵便番号、ご住所、お名前、お電話番号をメールか、FAXでお知らせください。
送料420円でお送りします。
新刊案内へ
ひつじ書房ホームページトップへ