ひつじ書房 漫画に見られる話しことばの研究 日本語教育への可能性 福池秋水著 ひつじ書房 漫画に見られる話しことばの研究 日本語教育への可能性 福池秋水著
2020年2月刊行

シリーズ言語学と言語教育 41

漫画に見られる話しことばの研究

日本語教育への可能性

福池秋水著

定価5000円+税 A5判上製 212頁

吉岡透(ae)/明田結希(okaka design)(装丁)

ISBN 978-4-8234-1015-4

ひつじ書房

The Study of Colloquial Japanese in Manga
Fukuike Akimi


【内容】
東京を中心とした首都圏の話しことばは、首都圏方言と呼ばれ、多くのドラマ、漫画などの作品で用いられるほか、日本語の会話教育でも取り入れられることがある。本書では、主に漫画作品を対象として、ラ行音の撥音化(わからない→わかんない)等、首都圏方言の表現のゆれがどのように使い分けられているかに関する観察を行った。日本語学習者の表現の幅を広げる支援を行うための基礎研究となることを目指す。



【目次】

第1章 序論

1 研究の背景
1.1 話しことばと「共通語」
1.2 首都圏に住む人々の言語生活と言語意識
1.3 首都圏方言と日本語教育
1.4 漫画と首都圏方言
2 本書の構成

第2章 首都圏のことばと共通語、標準語

1 はじめに
2 江戸語から東京語へ
3 昭和期以降の東京のことば
4 共通語と標準語―用語と概念の整理
4.1 共通語と標準語の定義
4.2 共通語と標準語の違い
5 共通語と首都圏方言
5.1 共通語の規範性
5.2 首都圏方言
5.3 首都圏方言の特徴
5.4 首都圏方言と日本語教育
5.5 首都圏方言をめぐる問題の所在

第3章 日本語教育と首都圏方言

1 はじめに
2 日本語教育で扱われる「日本語」
2.1 日本語教育と標準語
2.2 日本語教育で教授されていることば
2.2.1 日本語教材の中のことば
2.2.1.1 会話・発音教材
2.2.1.2 初級総合教科書
2.2.2 ラ行音の撥音化をめぐって
2.2.2.1 総合教科書
2.2.2.2 発音教材、会話教材
2.2.3 日本語能力試験と首都圏方言
3 まとめ

第4章 『新東京都言語地図』に見る首都圏方言の特徴的な表現―「スイマセン」とラ行音の撥音化

1 はじめに
2 資料について
3 「スイマセン」と「スミマセン」
3.1 『新東京都言語地図』における「スイマセン」と「スミマセン」
3.2 先行研究および他資料との比較
4 ラ行音の撥音化
4.1 先行研究
4.2 ラ行音の撥音化
4.2.1 『新東京都言語地図』における「わからない」の撥音化
4.2.2 他資料におけるラ行音の撥音化
4.3 ラ行音の撥音化に関するまとめ
5 まとめ

第5章 漫画作品を対象とする研究について

1 はじめに
2 話しことばのサンプルとしてのフィクション作品の価値
3 メディアの選択
4 漫画と日本語教育との関わり
5 漫画の中のことばとステレオタイプ
5.1 漫画のことばと役割語
5.2 「キャラクタ」と役割語
5.3 役割語の形成と共有
6 漫画とステレオタイプ
6.1 ステレオタイプとは
6.2 漫画とステレオタイプ
7 作品の選定

第6章 漫画作品中に見られるラ行音の撥音化の傾向―『きのう何食べた?』を題材に

1 はじめに
2 研究目的と研究方法
2.1 研究目的
2.2 研究対象
2.3 研究方法
3 結果と考察
3.1 品詞による撥音化の頻度の比較
3.2 発話者別の撥音化状況
3.3 史朗の発話における撥音化の状況
3.4 ケンジの発話における撥音化の状況
4 まとめ

第7章 漫画の登場人物が使う「すみません」と「すいません」

1 スミマセンとスイマセン
2 資料について
3 『きのう何食べた?』におけるスミマセンとスイマセン
3.1 話し手による違い
3.2 筧史郎のスミマセンとスイマセン
3.3 小日向のスミマセンとスイマセン
3.4 『きのう何食べた?』のまとめ
4 『海街diary』におけるスミマセンとスイマセン
4.1 話し手による違い
4.2 幸のスミマセンとスイマセン
4.3 『海街diary』のまとめ
5 まとめ

第8章 人間関係の変容にともなう話し方の変化―『きのう何食べた?』を題材に

1 はじめに
2 史朗と両親との関係の変容
2.1 『きのう何食べた?』作品内における時間の流れ
2.2 物語初期の史朗と両親との関係
2.3 史朗と両親との関係の変容
3 両親との関係の変容にともなう史朗の言語使用の変化
3.1 ラ行音の撥音化に関して
3.2 終助詞の使用傾向から見る史朗のキャラクタ
3.2.1 終助詞の使用傾向について
3.2.2 史朗のキャラクタの変化
3.3 両親に対する呼称に関して
4 まとめ

第9章 人間関係の変化にともなうスタイル・シフト―『海街diary』を題材に

1 はじめに
2 研究の対象と方法
2.1 研究の題材
2.2 『海街diary』のあらすじ
2.3 研究方法
2.3.1 作品内の発話のデータ化
2.3.2 本章で取り上げる首都圏方言の特徴な表現
3 結果と考察
3.1 心内文とやりとり発話
3.2 スタイル・シフトの例
3.2.1 独り言のかたちをとるスタイル・シフト
3.2.2 関係性の変化によるスタイル・シフト
3.2.3 話題によるスタイル・シフトの例
4 まとめと今後の課題

第10章 総括

1 総合的考察
2 日本語教育への還元
2.1 日本語の特性に対する理解を促す話しことば教育
2.2 自己表現のための表現の選択
2.3 自律学習リソースとしての漫画の可能性
2.4 首都圏方言話者に対する発信
3 今後の課題

参考文献
謝辞  
索引  



【著者紹介】
福池秋水(ふくいけ あきみ) 1977年生まれ。神奈川県出身。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士前期課程修了。國學院大學大学院文学研究科博士課程後期修了。博士(文学)。
タイ商工会議所大学人文学部講師、早稲田大学日本語教育研究センター常勤インストラクター、国際交流基金日本語試験センター研究員を経て、関西外国語大学外国語学部助教。主著『タイ人によくある失敗例―どうして間違い?なぜ失礼?あなたの日本語―』(泰日経済技術振興協会出版部、2008年、共著)、『まねして上達!にほんご音読トレーニング』(アスク出版、2014年、共著)


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