朝鮮語入門

油谷幸利 著

1339円

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はじめに

*(ひつじ書房注 書籍版のはじめにの一部を割愛しています)

 本書の到達目標は,「辞書を引いて簡単な文章が読めること」と,「辞書を引いて短文が作れること」 の2点に的を絞ってあります。従って,文末形式は最敬体(上称)とぞんざい体(下称)のみで,会話でよく 用いられる敬体(略待上称)や略待については解説を省きました。最敬体を知っていれば雰囲気が多少堅 苦しくはなるものの,会話をしたり手紙を書いたりすることは可能ですし,ぞんざい体を知っていれば 新聞や雑誌・学術論文などが読めるので,入門段階ではこれで必要にして十分だと考えたからです。

 7課から10課まで4回に分けて,基本的な漢字音について解説しました。従来,このような入門書 で漢字音について解説することはあまりなかったように思いますが,朝鮮語は日本語以上に漢字語をよ く使用する言語なので,日本語と規則的に対応する漢字音を知っているだけでも語彙が急激に増大する ことを考え,基本的なものについてだけ解説しておくことにしました。

 本書の正書法は,大韓民国のものに基づいています。朝鮮民主主義人民共和国の正書法は,大韓民国 のものと多少異なっています。主要な相違点については本書でもふれておきましたが,紙面の都合上, そのすべてについて解説することはできませんでした。変則活用については,各課に少しずつ分散して 解説することをせずに,最後の11課と12課にまとめておきました。従来の方法よりもこの方が学習 上効果的だと考えたからですが,結果は未知数です。場合によっては他の課と並行して11課と12課 を学習してもよいでしょう。

 巻末には,朝日および日朝の単語リストと,文法項目や練習問題を中心とした索引を収録しました。 単語リストには,テキストに出現する語彙だけでなく,基本的な単語を多数収録して利用者の便宜を図 りました。単語リストの朝日編では,変化形を独力で原形に戻せる力を養うために,最近の辞書の傾向 に逆行して,変化形見出しは収録せず,意図的に不親切に構成してあります。本格的な辞書としては, 著者などが中心となって編集した『朝鮮語辞典』(小学館)をお薦めします。また,いくつかの課にはコラ ムを付しておきました。朝鮮文化への興味を抱くきっかけになれば幸いです。

 著者は既に朝鮮語の入門書を2冊出版しており,今回さらに同種の書物を出版することはためらわれ たのですが,Macintoshの利用を前提としたCD-ROM版の計画があるとの松本功社長の言葉に心を動 かされ,執筆をお引き受けしました。著者はこれまでにPC9801 用に朝鮮語のワープロソフトやCAIソフトなどを開発してきましたが,単なる 98版の移植ではなく,Macならではの楽しいものを開発で きればと考えています。第1課についてのみ,試用版をフリーウェアとして公開しますので,3.5イン チの2HDフロッピーと切手をはった返信用封筒を同封の上,ひつじ書房宛に請求なさるか,パソコン 通信(ニフティサーブの外国語フォーラムFLMのデータライブラリ番号6番の105番に登録されて います)を通してダウンロードなさってください。また,本文は,ハングルトークを漢字トークに組み込んで,執筆しました。本書の刊行の後なら、日本で市販されている通常の Macintoshに,Korean Language Kitソフトウェアを組み込むことで同じ環境が実現できるはずです。

 愛知教育大学および名古屋大学では,本書の出発点になった私家版テキストを試用しました。愛知教 育大学においては,朝鮮語の授業が外国語科目ではなくて日本語教育コースの専門教育科目として位置 づけられている関係上,朝鮮語の習得もさることながら,日本語との対照研究,ひいては朝鮮語を母語 とする人々への日本語教育という観点からも講義を進めています。本書は工夫次第ではそのような授業
の教材としても使用できるように配慮したつもりです。愛知教育大学日本語教育コースおよび名古屋大 学における朝鮮語の受講生諸君は,私家版テキストによる授業を通してさまざまな疑問を提起すること により,本書の内容を改善する手助けをしてくれました。特に,信州大学外国人教師の延鎮淑さんと名 古屋大学大学院留学生の李殷娥さんは,native speaker として貴重な助言をしてくださいました。この場を借りてそれぞれの方に篤くお礼申し上げます。

 本書を通して,一人でも多くの方に朝鮮語を学ぶ喜びを味わっていただければ幸いです。

                          1996年3月

                         尾崎山にて  著者識

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朝鮮語入門 目次

第1課 文字と発音 <1>

第2課 文字と発音 <2>

第3課 文字と発音 <3>

第4課 最敬体,指示詞と疑問詞,人称代名詞

第5課 指定詞,存在詞,漢数詞,第一類の語尾

第6課 連用形,過去時制補助語幹,否定

第7課 連体形,固有数詞

第8課 尊敬補助語幹,第四類の語尾,第五類の語尾

第9課 未来,オヌエによる慣用句

第10課 ぞんざい体,引用文

第11課 変則用言 <1>

第12課 変則用言 <2>,竄ノよる慣用句

付録 単語リスト

   朝日編 95

   日朝編 118

   索引 133

**(ひつじ書房注 文字化けしている部分は近日、
   画像ファイルを張り付ける予定です)

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