
『本の未来』(アスキー出版局刊、冨田倫生著、価格2500円)をいう単行本を書店で見つけました。なかをパラパラとめくると、筆者の初めての単行本が誕生した過程のこと、その本が出版社の都合で絶版になってしまったこと、10年余が経過してこの本が「電子本」として甦ったこと、などがつづられていました。紙の本と電子の本の対比が主要なテーマのようでしたが、著者自身のこれら出版物とのつきあい方、書き手としての悲哀と希望などに私は興味が惹かれました。さっそくこの本を購入することにしました。
読了してみて、やはり紙と電子はいずれ近い将来、立場が逆転するだろう、電子メディアはますます発展するだろう、という思いをいっそう強くしました。著者の初めての本は、収められた旺文社文庫のシリーズが消えるとともに、本人への知らせもなく断裁され、この世からなくなってしまったのですが、電子化することで息を吹き返します。電子的な編集を加え、電子的な媒体に載せることで、紙・印刷・製本代よりもはるかに安価に制作できること、同時に、電子化されることによって読者の利便性が増すことが、説得力を持って語られています。さらにインターネットとのリンクによって情報の広がりが得られることを指し示していました。著者がこれらを実現するのに用いた道具はボイジャージャパンのエキスパンドブック(拡張本)でした。
しかし、電子本に対する失望も感じました。実はこの本には、紙に書かれた本文中の文章すべてをエキスパンドブック形式で収めたCD−ROMが付属し、そのエキスパンドブックを読むためのブラウザーソフト(Windows用、MAC用)も入っていました。以前にやはりエキスパンド形式のCD−ROM版『新潮文庫の100冊』を書店の店頭でいじってみたことがあるのですが、そのときはなんて使いづらく読みにくいのだろう、そのうえ動作が鈍すぎると思ったものですが、この本のCD−ROMでもまたまた同じ感想を抱かざるを得ませんでした。(動作の遅さについては、私のパソコンは旧式なので当然かもしれませんが、書店のデモでつかっていたパソコンは当時の新型だったようなので、重いソフトであることに変わりはない?)
電子本の成否はたぶんブラウン管なり液晶画面で、いかに読みやすい仕組み(ブラウザー)をつることができるかどうかということなのかも知れません。そして利用者(読者)をイライラさせないエディター並みの軽快さが求められるのではないかと思います。エキスパンドブックがその第一候補になるのかどうかは正直分かりませんでした。
紙の本で電子本の可能性を実感し、電子本そのもので現状の電子本(エキスパンドブックに限ってという留保がつきます)の限界を知るという一種のパラドックスに陥った気分ですが、『本の未来』の内容はとても示唆に富んでいると思います。みなさんにもこの本をおすすめします。
また、エキスパンドブックについて私の認識違い、認識不足があるかもしれません。どなたか補足していただけたら嬉しく思います。
長岡 義幸