メタファー研究の最前線書評『表現研究』
書評


 表現研究関係文献紹介
 楠見 孝編『メタファー研究の最前線』(ひつじ書房、平成19年9月刊、¥8000)

 日本でもついに、メタファーの学際的な論文集が刊行された。その研究に携わってきた一人としては実に感慨深く、刊行を心から喜ぶものである。
 34名にも及ぶ執筆者により、心理学・認知科学・人工知能・言語学・文体論・表現学・教育科学など、さまざまな分野からメタファーについての最前線の研究が紹介されている。このような論文集が実現したのは、ひとえに編者の楠見氏のボーダレスな活躍によるものであろう。
 本書は、第1部「メタファーをめぐる理論」第2部「メタファーとレトリック」第3部「メタファーと概念構造」第4部「メタファーと感覚」第5部「メタファーの認知メカニズム」第6部「メタファー的思考」第7部「まとめ」から構成され、これらのタイトルを見ただけでも、いかに欲張りな内容であるかが知られる。
 このうち、第2部に収められた4本の論文はすべて本学会会員(多門靖容氏・中村明氏・森雄一氏・半沢)の手に成るものである。楠見氏や山梨正明氏も含め、本学会とメタファー研究との関わりの深さが端的に表れていると言えよう。  学術書にしては珍しく、表紙イラストが可愛らしくメタファーを形象化していて、思わず手に取りたくなる。価格自体は決して低いとは言えないが、555ページにもわたる内容の濃さからすれば、むしろお買い得であると強調したい。
 メタファーをとおして、認知や表現のメカニズムを知るという意味でも、きわめて有用なものであり、本学会会員はとくにお勧めしたい。
 (半沢幹一)

(表現学会『表現研究』86)より転載



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